「ヒアルロン酸注入」でパーンと膨れあがる
だが、技術は進化し、皮膚の弾力の役割を果たす体の成分「コラーゲン」を亀頭に注入するようになり、ここ15年ほどの主流は「ヒアルロン酸」だ。
「これも皮膚の成分です。保湿の役割をする成分で、顔の美容整形で鼻筋や顎に入れて使われてきました。ヒアルロン酸を亀頭のエラ部分に注射すると、キノコの笠が開いたように、パーンと膨れあがるのです」
さらに長茎手術なるものもある。ペニスは体の中に埋まっている部分があり、これを引き出すことで2~5センチほど長くなる。
水谷氏のクリニックを訪れる患者の半数以上は、地方からやって来る。手術を受けるのは、決して都会だけの文化ではないのだ。
中高年が、ペニスを大きく、長く、角度をつけてそそり立たせようとするのに対して、ペニス手術の主流だった包茎手術は減少傾向にあるという。若者に多かった包茎手術は少子化もあるだろうが、やはり若者がセックスをしなくなった影響がここからも垣間見える。男性器手術が映し出す社会の一面である。
セックスは本能的なものから楽しみへ
さて、アメリカ、日本と下半身事情を見てきたが、この流れは今、中国に到達しようとしている。
豊島区で山口病院を経営する山口明志院長は、ガンや生活習慣病の治療に携わる医師だが、その過程でEDになった人々に独自の治療を施してきた。EDの具合によって薬剤をブレンドして陰茎に注射をする、数少ないオーダーメイド医療である。重い病気で性を諦めた人たちの望みを叶えてきた。
その山口氏は中国で中国医科大学名誉教授、東方美容外科学会名誉会長を務めてきた。中国の医学発展に寄与する山口氏が、こんな話をする。
「今、中国で40代以上が集まると、EDの話題になります。食事の変化による糖尿病の増加、経済成長によるストレス、高齢化社会といった要素からEDも増えているのでしょう。また、生活にゆとりが出てくると、セックスは本能的なものから楽しみへと変わり、質が問われてきます。QOLという概念が中国でも広まってきたのです」
そこでドッと増えたのが“偽バイアグラ”というのが、いかにも中国らしい。
「美容外科は、人を幸せにするための医学」と山口氏は言う。いずれ中国でも性器をデザインする手術へのニーズが高まっていくだろう。経済的なゆとりのある生活が、セックスと生殖器のあり方を変えていく。もはやSFの世界ではなくなっているのだ。
次回はいよいよ最終回 !!
連載「ヒトは何歳までセックスできるのか?」記事一覧
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