無意識にセックスから遠ざかる「性的興奮障害」
「見た目は締まっているんですがねえ」と、膣を診た医者は言うが、彼女の膣は弾力性を喪失していたのだ。関口氏が話す。
「クリトリスには足があると言われています。この足を押し広げられると快感が得られる。適度に締まって弾力性があった方がいいんです。オーガズム障害も、しっかり締まって刺激があり、骨盤底の筋力がちゃんとあれば、刺激度も興奮度も上がります」
経膣分娩を経験すると、若いうちは感覚的に何の問題がなくても、40代半ばをすぎた頃から何らかの障害を感じるという。それが「膣弛緩症」である。局部が締まらないと、「性的興奮障害」になり、セックスから遠ざかることになる。これでセックスレスになる中年女性は多いが、アメリカは社会的な背景が違うため、性機能障害の治療が進歩していった。
「アメリカで社会的地位が高くなるほど、男性は浮気をすると社会的制裁を受ける文化があります。地位が低く、権力から遠いほど、妻以外と性交渉しがちですが、偉い人ほど浮気ができないので奥さんと一生懸命セックスをする。一方の奥さんには、性的意欲障害が意外と多い。奥さんは『やりたくない私は異常かしら』と思って手術を受けるのです」(関口氏)
ちなみに、アメリカ人男性の間では、「ニンジン症候群」なるものがある。やる気を出すために高麗人参エキスをがぶ飲みして、興奮のあまり鼻血を出す人々だ。夫婦共々、必死さが日本とは違うのである。
欧米の富裕層に広がる「見た目を綺麗にしたい」という願望
もう一つ、手術の背景にあるのが、「見た目を重視」するという文化である。
「欧米の女性は、陰部の毛を剃り上げてツルツルにしてしまうんです。毛があれば、小陰唇のヒダはあまり見えませんが、ツルツルにするとはみ出した部分が見えてしまう。欧米人はヒダが大きいことをあまり好まず、小陰唇は1センチくらいがいいと思ってるそうです。男性もそういう嗜好が多く、女性は余計な部分を切除するのです」(同前)
これがレーザーデザイニングである。つまり、見た目のコンプレックスを解消するための手術だ。前述したレーザータイトニングが、閉経前後の40代半ばから50代、60代の女性に多いのに比べて、こちらは20代から40代が中心だ。日本でタイトニングを受けるご婦人たちは、
「お金は夫が払うから、いくらかかっても構いません」
と言い切る富裕層が多い。一方のデザイニングは本人の悩みからくる切実な動機のため、富裕層に限らない。