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やっぱすげぇわこの人って思いました

 蛇足ながら、その玉塚元一さんがローソンをアレになってから、何故か私のよく知る業界にやってきて、突然ハーツユナイテッドグループ(現・デジタルハーツHD)の顧問に、そして社長になってしまいました。まるで台風が突然こっちに進路を変えてきたかのようです。玉塚元一さんが社長就任した2017年6月から現在にいたるまで素敵な放物線を描く美しい下落の株価チャートを実現していて、実はこの人は現代美術のアーティストだったんじゃないかとすら思います。

 さらに経済同友会で玉塚元一さんが「マイナンバーの情報を民間でも利活用させろ」とかいう、個人情報保護の流れを猛烈に逆流する提言をブチ込んできて、やっぱすげぇわこの人って思いました。

経済同友会・玉塚元一さんが取りまとめた『マイナンバー制度に関する提言』が物議(山本一郎) - Y!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/byline/yamamotoichiro/20180809-00092554/

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 そんな柳井正さんは、我らが突撃ジャーナリスト横田増生さんが上梓した『ユニクロ帝国の光と影』、さらには実際にユニクロで1年働きに出て書き上げた渾身のルポ『ユニクロ潜入一年』にはどうも怒ったらしく裁判になっていました。本はとっても面白かったけど、ムカつく気持ちは分かります。最高裁までいったのにユニクロが負けちゃったようですが、柳井正さんには同情の気持ちでいっぱいです。心からお悔やみ申し上げます。

せっかく女性の執行役員も誕生したことですし

 やっぱりこう、企業を急成長させたカリスマ経営者というのは、どこかしらワンマンなところがあったり、性格面で良いところもむつかしいところもあるのだろうと思いますが、ご子息お二方(柳井一海さんと柳井康治さん)も揃って無事にユニクロの取締役になっておられるとかで、実に日本の伝統に忠実な世襲へ向けて着々と歩んでおられるようです。

 日本は駄目だ、最悪だと叱咤激励を繰り返す柳井正さんも、やはり実は心のどこかで日本企業かくあるべし的な長期の経営ビジョンを抱えて70歳を迎えられたのだなあという人間臭さを感じさせます。

そろって取締役に ユニクロ柳井社長のふたりの息子はどんな人?
https://bunshun.jp/articles/-/9383

©文藝春秋

 ここはひとつ、柳井正さんにはこれから衰退と不況に沈む(かもしれない)日本経済の再生を狙って、その知見と経験をベースにもっともっとモノ申してほしいんですよね。いま、日本に必要なのは柳井正さんのようなユニクロ的世界観なんですよ、きっと。間違っても柳井さんが社外取締役を務めるソフトバンクグループの総帥・孫正義さんもろとも世界的な金融不況で沈むようなことがないように祈っていますし、そのついでにみずほフィナンシャルグループも一緒に轟沈するようなことがあれば「日本は最悪だ」と言っても「最悪にしたのはお前だろ」などと文春読者にコケにされてしまいかねません。

 私個人としては、せっかく女性の執行役員も誕生したことですし、世界企業が当然背負うべき社会的責任(CSR)としてユニクロの労働分配率をもっと引き上げ、ブラック企業批判をされないようなさらなる成長企業を目指して300歳ぐらいまで柳井正さんには健康に、健全に、ユニクロを牽引していっていただきたいと願うわけでございます。長きにわたった徳川幕府の安定と繁栄を超えられるのは柳井正さんしかいない、私はそう信じています。

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