「日本国籍を持っていない選手もいる」けど受賞資格はあるか?
2004年の欧州遠征でジャパンはスコットランド代表に8-100と大敗している。2005年は来日したアイルランド代表に12-44、18-47で連敗している。国際レベルから大きく引き離されていたラグビー界が、この15年で劇的な成長を遂げた。これだけ劇的に伸びた業界はスポーツに限らずなかなか見つからない。彼らは我々の希望であり、人々に勇気をもたらす存在だ。
「日本国籍を持っていない選手もいるぞ」という疑問もあるだろう。ラグビーの代表チームは36ヶ月(3年)以上の在住歴があれば資格を得られて、今回のジャパンも7名が外国籍だ。日本に限らずどのチームも外国出身選手を起用している。ただし桜の戦士たちは日の丸を背負い、間違いなくこの社会を楽しませてくれている。
そもそも国民栄誉賞は中華民国籍の王貞治選手に対する顕彰として用意されたもので、国籍は受賞要件にない。したがってジェイミー・ジョセフヘッドコーチも含むチームの全員に受賞資格がある。
優勝すればもちろんだが、仮にそこまで届かなくても、彼らが残したインパクトは受賞に値する。色んな背景を持つ人々が、民族や考え方の違いを受け入れ、コミュニケーションを取り、それぞれの強みを生かして「ワンチーム」として機能するーー。日本ラグビーが実現している有り様は、令和の日本にとって素晴らしいお手本だ。
外国人頼みというネガティブな発想はナンセンス
今の時代は良くも悪くも世界がつながっていて、日本の大企業も海外市場を開拓しなければ成長を遂げられない。逆に外国の企業、人材がこの社会を充実させるために大きな貢献を果たしている。決して一方的な収奪でなくギブ&テイクの相互互恵関係だ。
外国人頼みというネガティブな発想はナンセンスで、我々はむしろ彼らを活かせた懐の広さを誇るべきだ。日本のラグビー界が頭の硬い、心の狭い人たちの集まりなら、外国出身選手はあれほどノビノビとプレーできなかっただろう。
今大会は組織委員会のプロモーションも見事だ。ドラマの制作、企業とのタイアップなどマスメディアを使ったオールドスタイルから、ツイッターやインスタグラムを活用した今風の発信まで、スタッフが実に洗練された仕事を見せている。日本のスポーツ界の中では最後までアマチュアにこだわっていたラグビー界が、今は野球やサッカー以上に「プロフェッショナル」な集団になっている。彼らは社会にとって、よき変化の象徴だ。
ラグビー日本代表には堂々と国民栄誉賞を受賞する資格、理由がある。現実的な補足をすると、選考を行うのは安倍晋三首相と官邸のスタッフだ。日本ラグビー協会の森喜朗元会長は首相と同じ派閥で、いわば元上司と部下の間柄。そのような人間関係も、受賞の追い風になりそうだ。