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インドがアメリカと中国のどちらに就くかで、世界が動く

 世界は今、アメリカと中国の二極時代の只中にある。

 2019年現在、トランプ大統領と習近平国家主席が情報通信と貿易の分野で激しいツバ競り合いをしているのは、近未来の世界の覇者が、これまで通りアメリカであり続けるのか、中国が取って代わるのかという、分水嶺の時を迎えているからだ。この喧嘩は当分続くのだろうが、その先はどうなるのだろうか。ロシアは国力の衰退と国際社会での存在感の縮小傾向が続き、ヨーロッパはドイツのメルケル首相が主導する時代が終わり、地域としての核を失い迷走の中にある。アメリカと中国2Gの時代の行方を左右するのはインドしかない。インドがアメリカと中国のどちらに就くかで、世界の覇権の趨勢は大きく動くだろう。ヒマラヤ山脈とインド洋に囲まれている地理的要因もあり、これまで長く非同盟外交を掲げてきた国だけに、これからの立ち位置に世界が注目している。

 そしてインド経済はどこまで伸びるのか。国内に閉じていたインドの変化が、世界経済に及ぼす影響は甚大だ。経済規模という点でいえば、「米中印3Gの時代」はもう10年後に迫っている。GDPの額で現在世界5位にあるインドは、2028年までに日本とドイツを追い抜き、世界3位の経済大国になると予測されている。未開拓の若年市場と地方への消費文化の広がりという、中国と似た道を進んでいるため、政治さえ安定すればインドの今後の経済発展はほぼ確実という見方が強い。そして現在13億のインドの人口は、2027年前後には中国を抜き、世界最大になる見込みだ。中国は一人っ子政策をとったため、日本と同じように社会の高齢化が始まっているが、インドでは若者の数が多く、労働と消費の市場が拡大する人口ボーナスの期間が2040年まで続くと予測される。

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化石資源に乏しい国が頭脳立国として生きる術

 経済力や軍事力で強大なパワーとなり、アメリカ、中国に次ぐ、第3の大国への道を突き進むインドは、これまでにない方法で「世界地図」を塗りかえている。

 化石資源に乏しい国が頭脳立国として生きる術。そしてインド訛りの英語をものともせず果敢に外国に移り住み、グローバル時代を生きるインド人のたくましさ。宗教対立、格差社会、貧困対策から、代替エネルギーへの転換や、データ・ネット社会の展開まで、インドは世界が抱える様々な課題に独自の方法で解決策を見出そうとしている。そのゲーム・チェンジャーとしての取り組みに、閉塞感に悩む先進国が先を争って学ぼうとしているのである。