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日産幹部が明かした「偽装出向」の実態

 このトーマス氏は17年10月にゼネラル・エレクトリックから日産に入社し、すぐに常務執行役員兼CIO(チーフ・インフォメーション・オフィサー)に就任した。西川氏は17年4月に社長兼CEOに就任しているので、日産社内では「西川氏が採用して抜擢した人物」(同前)と言われている。

 日本人幹部がトーマス氏にインド以外への投資などシステム予算利用の正常化を訴えると、こうした幹部は左遷や降格の憂き目にあっているという。トーマス氏が統括するのは日産社内では「グローバルIS・IT部門」と呼ばれ、日本には約350人の社員がいるが、こうした実態を嫌忌してこの2年間で50人ほどの日本人が退社したという。

社長兼CEOを辞任した西川廣人氏 

 そして、トーマス氏は側近を破格の待遇で迎えたイエスマンの5人の部長級外国人で固めているという。その5人は社内ルールに逸脱する形で高額な報酬と破格の福利厚生の待遇を得ているそうだ。この実態は内部でも「偽装出向」と呼ばれている。

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「偽装出向」について、前出・幹部はこう説明する。

「日本で採用したのに、勤務実態のない北米日産やインド日産からの出向扱いにしている。海外からの出向扱いだと給料が約1・5倍になり、役員ではなくても家賃が50万円のタワーマンションにも住めて、クルマの送迎が付く」

「最もモラルが低い部署になってしまった」

 こうした幹部は周囲から見る限り何の仕事をしているかも不明で、毎日午後5時頃には帰宅してしまうことが多いという。「この実情を見て多くの社員がやる気を失い、IS・IT部門は社内で最もモラルが低い部署になってしまった」とその幹部は嘆く。

©iStock.com

 このIS・IT部門は、コネクテッドカーなど次世代技術開発とも深くかかわっている。たとえば日産の電気自動車「リーフ」はすべて無線で、日産のデータセンターとつながっており、いつ充電したか、電池のいたみ具合はどうかといった状況がリアルに吸い上げられ、次の開発に生かされるようになっている。ビッグデータとクルマを融合させて、新しいサービス・技術を生み出していく時代に、データセンターを運営するIS・IT部門は「裏方」として重要な責務を果たしている。こうした部署のモラルが低くなっているとすれば、商品開発面への影響も否定できない。