日産は早期の立て直しを目論むが、主要市場である米国と中国は減速気味であり、再建は容易ではない。特に日産の業績落ち込みの主要因は、ゴーン氏の拡大路線の失敗にある。氏は台数の拡大のみを目指して新興国への投資を優先し、新車開発への投資を抑制してきた。これが響いて、日産のクルマの商品としての魅力が低下、値引きしないと売れない状態になり、経営を圧迫している。一般的に新車開発には4~5年かかることから、短期間で再建できない可能性もある。
自動車メーカーは、開発、生産、購買、営業、アフターサービスなど様々な部署が関わって製品とサービスを売っている。ワールドカップが日本で開催され、オールジャパンの活躍によって盛り上がるラグビーのように、チームワークやチームを構成する社員らの士気がものをいう世界でもある。しかし、今の日産では、その社員らの士気が大きく下がっている。
北米データセンターの停電は「人災」だった
今年8月、日産の北米データセンターが停電したことで工場運営のシステムがダウンし、テネシー州やメキシコにある工場で生産ラインが停止したほか、部品調達や給与支払いのシステムまでも止まってしまう一大事が起こった。北米は日産にとって最重要収益源。現在は、安売りで毀損したブランドイメージを立て直すために必死のリカバリー戦略が展開されている矢先に躓いた。
この停電の理由について日産幹部が打ち明けた。
「システム投資を怠ってきたからです。通常、データセンターにはバックアップ電源があり、不慮の事態に対応できるシステムになっていますが、それすら対応できていなかった。予防保全が充分になされていなかったわけです」
その幹部に投資を怠ってきた理由を聞くと、これはもはや「人災」に近い。
「日産ではシステム投資を年間に200億円程度使っていますが、そのうち約半分をインドにつぎ込んでいます。これには理由があり、インド人のトニー・トーマス常務が自分の故郷であるケララ州に『デジタル・ハブ』を強引に設立したことで、他の仕事に全くお金が回らない状況になりました」
インドにはチェンナイ(タミル・ナードゥ州)などにデジタルセンターがあり、ケララ州への新設は不要な投資と日産社内では見られている。ケララ州への投資の理由は「トーマス氏が同州への州知事選挙への立候補を予定しており、その選挙対策として日産の資金を活用しているのではないか、と社内では指摘され始めている」(同前)そうだ。