文氏は曺氏辞任に際し、社会の対立が深まったとして「結果的に国民の間に多くの軋轢を引き起こしたことを大変申し訳なく思う」と謝罪。「われわれの社会は大きな痛みを経験した。大統領として国民に非常に申し訳ない気持ちだ」と語っている。
大統領として、ケジメをつけた形の文氏ではあったが、その後も世論の批判は燻っていることが数字に表れた。
韓国ギャラップが曺氏辞任直後の10月15~17日に行った世論調査(18日発表)では、文氏の支持率は2017年5月の就任以降、過去最低の39%にまで落ちた。前週よりも4ポイント低く、同社の調査で支持率が40%を割ったのは初めてのことだ。つまり文氏の"みそぎ"に世論の多くは満足していない、ということだ。
さらに、政権与党の左派「共に民主党」の支持率も36%まで低下した。保守系の最大野党「自由韓国党」の支持率は27%。両党の支持率の差は、8月第2週の時点で23ポイントも開いていたが、9ポイントまで縮まった。
野党や保守派は、「国政混乱の責任は文在寅大統領にある」と任命責任追及の声を日々強めている。彼らが強く意識しているのが、来年4月に文政権が初めて迎えることになる国会議員選挙(総選挙)だ。左派系の与党が敗北し、野党「自由韓国党」が躍進するような事態になれば、その後に政権末期を迎える文政権のレームダック化(死に体化)が加速する可能性さえ十分にある。
北のラフプレーにも「腰抜け」対応
政権発足当初は80%台の支持を集めた文氏だが、現在はその半分の水準。韓国大統領府では「一喜一憂せず、できることに最善を尽くす」とコメントしているが、文氏と政権与党の大幅な支持率の回復は難しい。
というのも、政権の重要課題は、どれも急激に改善されるとは思えないものばかりだからだ。相変わらず停滞が続く韓国経済。南北関係の改善も見込めない。さらに、日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の韓国側の一方的な破棄決定などにより日米との関係もよくない。
そんな現状でも、文政権の基本姿勢は変えるつもりはなさそうだ。たとえば検察の捜査権限を縮小する「検察改革」だ。