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バトルロイヤル形式のフェンシング!? 太田雄貴が目指す楽しそうな“第4の種目”

『CHANGE 僕たちは変われる 日本フェンシング協会が実行した変革のための25のアイデア』

2019/11/01
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適当でゆるい大会運営だけど、好きなように楽しんでいた

 正直にいえば、大会の運営はかなり適当でゆるく、予定通りに競技が開始されないこともありましたし、連携がうまくとれず、ある競技団体とFISEの事務局が揉めていたりもしました。日本ならきっと、テレビなどの放映時間などにも関わってきますから、もっとキッチリやらないと問題になってくるでしょう。

 ただ、そのゆるさを観客のみなさんが許容した上で、個々人が、横並びではなく、それぞれに自立して、好きなように楽しんでいました。

 中でも感動したのは、BMXの会場で、難しい技にトライして失敗をしたライダーに観客が惜しみなく拍手を送るシーンです。勇気を振り絞ってチャレンジしたけれど、失敗して転倒、全身を擦りむき、地面に叩きつけられたまましばらく動けない。そんなときに、観客はそれぞれに、スタンディングオベーションで彼の勇気を讃えるのです。

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©iStock.com

 その自然発生的な応援の拍手、称賛の拍手を目にして、涙が出そうになりました。

 この文化は、もしかしたら東京オリンピックでアーバンスポーツがもたらしてくれるレガシーではないか、と思うのです。

プロセスを評価してあげられる文化

 日本には、こういう文化が果たして根付いているでしょうか。

 横の人たちの動作を見て、それを真似るように拍手をしていたり。

 サッカーで、選手がシュートを外すと、溜め息をついていたり。

 テニスで、選手がミスをすると“あー”とがっかりした声を上げたり。

 そうではなくて、自分が声を上げたいときには自由に叫び、シュートを打ったことやチャレンジしたこと、勝利や成功といった結果だけでなくプロセスを評価してあげられる文化を、スポーツ界から日本全体に広げていくことができれば、どんなにいいことか、と思います。