3年連続日本一。福岡ソフトバンクホークスが2年連続でシーズン2位からの「下剋上」を果たした。CSファーストステージの初戦で負けて以降は無傷の10連勝。巨人との日本シリーズでも4連勝と全く危なげなく勝ちきった。強すぎてハラハラするような場面も少なく、他球団のファンをしらけさせるほどに圧倒的だったソフトバンクは、なぜここまで強いのか。巨人との比較を交えてアナライジングしていきたい。

3年連続で日本シリーズを制覇し、喜ぶソフトバンクナイン ©時事通信社

間違いが起きないように計算された今季のソフトバンク

 どれだけ強いチームでも短期決戦は難しい。弱いチームとの対戦でも、排除できない運や偶然の要素で負けることがある。これまでも日米で、シーズンで好成績を残したチームが数多く「下剋上」にあってきたのがその証だ。ソフトバンクも00年代には毎年のようにプレーオフで苦汁をなめさせられ、「秋の風物詩」と揶揄された経緯もある。どれだけいい選手が揃っていても、相手が予想を上回る大活躍をしたり、その日に限ってエースが炎上したり、主力がブレーキになってしまったり、ミスを連発したり、勝っていても最後に抑えが打たれたり、間の抜けたヒットが出てしまったりといったリスクを完全には排除できない。

 そうした不確定要素を排除して、間違いが起きないような圧倒的な物量とスペック、データと経験、メンタルを全て兼ね備えているのが今季のソフトバンクと言えるだろう。

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 まず投手陣。エースの千賀を筆頭に、常時150キロを超える速球に、落ちるスプリットやカットボール、鋭いパワーカーブを兼ね備えたバラエティ豊かな陣容が揃っている。重要な場面ではことごとく、ストライクゾーンからカクッと変化する「スラット・スプリット型」投球で千賀や森唯斗、ルーキーの甲斐野らが抑え込んでいたのがその象徴だろう。コースに決まれば空振りか、見送り。高めに抜けても意表を付かれた見逃しを繰り返した。結果として巨人打線は、日本シリーズ最多のチーム35三振、最低打率.176、最小安打タイ22安打、1試合最多タイ13三振を喫した。ここまで完全に抑え込まれては、それこそ何も起きない。「まさか」すら起こり得ないのである。坂本、丸、岡本らの打線のコアを、(4戦目にようやく少し打たれるまでは)完璧に抑え込んだ。スラット・スプリット型投球はレベルの高い相手にほど効果的なのである。

 3戦目にはルーキー戸郷が決めにいったスラットを内川に拾われてから動揺して崩れ、4戦目にはエース菅野がグラシアルにフルカウントから甘いスライダーを投じてしまい3ランを喫した巨人とは対照的だった。