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「僕は正直飲みたくないですね」

 言わずもがなだが、ガムシロップの大量投入は体に良い訳がない。タピオカに吸収されたガムシロップ、そもそものミルクティーの甘み、さらにホイップクリームなどトッピングを足すと、もはや糖分の塊だ。

「ガムシロにドロドロに浸かったタピオカをみると、僕は正直飲みたくないですね。皮肉なことに、私たちのような移動販売の店って、人気店舗とかに並びたくない中高年のおじさんの客が多い。若い子が飲んでるから好奇心で来てくれるんだけど、身体には悪そうです」(A氏)

タピオカミルクティーの完成 ©文藝春秋

 そんなタピオカドリンクを摂取すると、どれほど体に負担がかかるのだろうか。管理栄養士の安中千絵氏が解説する。

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「タピオカは、ほぼ糖質で構成されている、いわば“糖質の塊”です。特筆すべきビタミンやミネラルは含まれていません。心配なのは、タピオカの売りのモチモチ感はアミロペクチンによって生まれますが、この成分は消化吸収が早いため、血糖値を急に上げやすい」

糖質量はLサイズで角砂糖50個分

 糖質の多さに血糖値の急上昇……中高年には耳の痛い話だが、さらにガムシロップの影響も大きいという。市販されているガムシロップは、ただの砂糖水ではなく、ブドウ糖果糖液糖など「異性化糖」が主要成分であることがほとんどだ。

「異性化糖は口当たりが爽やかなので、過剰な甘さを感じにくく、スルスル飲めてしまうのが怖い。肥満や糖尿病の原因を作っている甘味料といわれ、現在世界中で問題視されています。異性化糖とタピオカで、ダブルに糖質をたくさん摂ってしまうことにもなるので、血糖値が非常に上がりやすく、“血糖値スパイク”(食後に血糖値が急激に上がること)を起こしてしまう可能性すらある」(安中氏)

 ちなみに、タピオカミルクティーの糖質量は、Mサイズカップで換算すると角砂糖33個分、Lサイズだと角砂糖50個分にもなるという――。

 営業を始めて半年になろうとしている、A氏の「タピオカ全国行脚」は好調そのものだ。

「いまは埼玉で営業していますが、売れ行きを見ながら、これからは北関東、上越地方と北上していこうと思います。まだまだいけると思います。それに、タピオカの次はレモネードの販売を考えています。韓国ではインスタで盛り上がっていて、これから来ると言われていますから」(A氏)

 ブームの陰で、ミルクティーに沈んだタピオカの質も“玉石混交”。しっかり品質を見極めて行列に加わりたい。

タピオカの「秘技」を証言する移動販売業者のA氏 ©文藝春秋