教育に関する講演会に呼ばれると、司会者が「2020年、いよいよ日本の教育が大きく変わろうとしています。そこで教育ジャーナリストおおたとしまささんをお招きして、これからの教育や学校、保護者の心構えについてお話しいただきたいと思っております。みなさま拍手でお迎えください!」と私を紹介してくれることが多い。
しかし結論からいえば、少なくとも2020年に教育が大きく変わるということはあり得ない。また、それを初年度だとしても、その後、掲げられた理念の通りに高大接続改革が進むとはとても思えない状況にすでになりつつある。初年度における、受験生にとっての最重要の変更点をひとまず列挙する。
●センター試験を廃止し、代わりに「大学入学共通テスト」を実施する。
●「大学入学共通テスト」の数学と国語には記述式問題が3問ずつ出る。
●「大学入学共通テスト」の英語ではリーディングとリスニングが100点ずつの配点となる。また民間試験も併用する。
要するにセンター試験のマイナーチェンジでしかない。にもかかわらず、英語民間試験導入をめぐる混乱、国語の記述式問題の採点をめぐる不安など、入試本番まであと1年3カ月を切ったというのに依然として課題は山積みで、もはや炎上状態といっていい。何が炎上しているのかは拙著『大学入試改革後の中学受験』(祥伝社新書)に詳しく書いた。
大学付属校が改革成功の「秘策」?
この数年、中学受験でも高校受験でも大学付属校人気が顕著だが、実際、大学入試改革がここまで大炎上しているなか、大学付属校という選択には一定の合理性があることは否定のしようがない。
そもそも政府が掲げる高大接続の理想型は、すでに大学付属校各校が実現しているのだから、極端な話、理想の高大接続を実現したいのなら、さっさとすべての高校を実質的に大学付属校化してしまえばいい。
実際、私立大学は、直系の付属校や系属校のほかに、「提携校」「関係校」などという形で別法人の私立中高一貫校とも手を結び、内部進学枠を与えるケースが増えている。
青山学院大が浦和ルーテルや横浜英和と提携したようなケースだ。東京都の女子校・香蘭は、立教大と関係校の関係にあり、数年おきに内部推薦枠が増えている。麹町学園女子は一般的な指定校推薦枠とは別に、共立女子大、東京女子大、東洋大、女子栄養大、成城大と学部単位で提携しており、独自の進学枠を得ている。