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大炎上中の大学入試改革――最強の対策が中学受験であるという皮肉

そして中学受験では大学付属校を選ぶべき?

 12歳の時点で最難関校に合格できるほどの力は身に付いていなくても、それに準ずるような訓練をやりきった子どもたちなら、中高6年間もあれば十分にそのレベルに達するポテンシャルをもっていると考えられる。最難関大学に合格できるかどうかはまた別の話だが、少なくとも「大学入学共通テスト」の記述式問題ごときを恐れる必要はまったくない。

 実際に、公立中高一貫校対策を得意とする中学受験塾の取材で、大学入学共通テストのサンプル問題を、12歳の中学受験生たちがいとも簡単に正解してしまったという話を聞いたことがあるが、中学受験について長年取材してきた立場からすれば、驚くほどの話でもなかった。

中学受験算数で「就活でも高得点がとれる」

 さらにいえば、就職活動のために受検することが多いSPIという適性検査の「非言語分野」のある領域の問題は、中学受験の算数のいわゆる一行問題にそっくりなのを知っているだろうか。中学受験で難関校に受かるような子どもなら12歳の時点で高得点がとれるだろうと、某私立中高一貫校の数学教師は言っていた。

©iStock.com

 また、ノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・ヘックマン博士は、幼児教育の社会的投資効果を訴えていることで有名だが、実は別の研究調査も行っている。小学生にある経験をさせることで、それがその後の人生において大きなスキル向上につながることがわかったというのだ。

「子供に課題を与えて、毎日来させて、計画・実行させ、最後に仲間と一緒に復習をさせる実験をしました。1日2、3時間、小学生に対して2年間毎日実施しました」(日経ビジネスオンライン2019年8月9日の記事より)。やっていることは中学受験勉強とそっくりではないだろうか。

 だから、先行き不透明な状況のなかで中学受験を志す親子には、励ます意味を込めて伝えたい。どんな学校に進むことになろうとも、いま、中学受験勉強をしていることは、何よりもの大学入試改革対策であり、それどころか、社会人基礎力にもなるのだと。

 一方、硬直化した受験システムを変えるはずだった改革が、従来の“勝ち組”をさらに有利にしてしまう可能性があるというのはなんとも皮肉である。

(追記)11月1日、文科省が英語民間試験の翌年4月からの導入を見送るとの方針を固めたことが報道された。こうなると、2020年度の運用開始は実質的に極めて困難な状況になる。ついでに、採点をめぐる不安や合否判定への活用方法をめぐって混乱が大きい国語・数学の記述式問題導入も一度白紙に戻して見直してみてはどうか。

大学入試改革後の中学受験 (祥伝社新書)

おおたとしまさ

祥伝社

2019年11月1日 発売

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