大学入試改革の本来の目的は、センター試験を廃止することでも、民間検定業者に特需を与えることでもなく、欧米の大学進学システムと同じように、AO入試や推薦入試に似た形で大学に進学できるルートを増やすことなのだ。
ただし一部の「AO入試」は学力不問で大学にとっての「お客さん」を青田買いするための手段に成り下がってしまっており、ネガティブなイメージも付いてしまっている。そのため、2020年度から「総合型選抜」と呼び方を変えることになっているというのが時代の流れなのである。
では中学受験ではみんな大学付属校を選ぶべきなのか?
ではこれから中学受験をする子どもたちはみんな、大学付属校を選ぶべきなのだろうか。いや、そこまで思い詰める必要もない。ここでは現在の大学入試改革の進め方の矛盾を浮き彫りにするための対比として、大学付属校という選択のメリットを挙げたまでだ。
2020年度はもちろん、さらなる改革が予定されている2024年度になっても混乱が続くことはほぼ間違いないが、大学入試の実態自体はそれほど変化しない。特に学力上位層はまったく影響を受けないといってもいい。
高校別の東大合格者ランキングや最難関国公立大合格者ランキングにも大きな変化はないだろう。もしあるとすれば、大学入試改革に振り回されすぎた高校がランクを落とすくらいである。
国公立大学を受けるような受験生にとっては、記述式問題は当たり前だし、東大が出願資格として求める「CEFR(セファール)」(国際的な言語運用能力指標)の「A2」レベルの英語力を身につけることだってさほど難しくない。
AIによる東大合格を目指す「東ロボくん」プロジェクトの指揮を執った新井紀子氏は著書『AIvs.教科書が読めない子どもたち』のなかで、中学受験で「御三家」と呼ばれるような学校について、「12歳の段階で公立進学校の高校3年生程度の読解能力値がある生徒を入試でふるいにかけています。(中略)東大に入れる読解力が12歳の段階で身についているから東大に入れる可能性が他の生徒より圧倒的に高いのです」と述べている。