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私は92歳まで生きるって決めてるんです

―― 11月にまたコンサートを開かれますが、歌手活動も長いですよね。

田嶋 65歳のとき、私が住んでる軽井沢の町おこしとして頼まれたのがきっかけで、突然はじめました。このところ毎年三越劇場でコンサートがあって、「蟻ん子」というライブハウスでも毎月歌ってます。でも、つらいですよ(笑)。全然うまくならないし、「もっと自分の歌に惚れろ」って言われるんだけど、なかなかそれができない。

―― 今年6月には、筆でデザイン的な文字を書く「書アート」で、内閣総理大臣賞を受賞されました。65歳を過ぎてからも、次々と新しいことに挑戦していますね。

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田嶋 46歳を過ぎてから、すごく解放されましたよね。今は、人生で一番健康なんじゃないかと思いますよ(笑)。やっぱり自由は大事だなと思いますね。今78歳で、もうすぐ80歳でしょ。私は92歳まで生きるって決めてるんです。46歳で解放されたから、その2倍生きようって。

―― 偶然にもお母さまと同じ92歳ですね。

田嶋 そうですね。でも、あと13年だから、13階段を上がるみたいになっちゃって、死ぬ年齢を決めたのがちょっと窮屈になってきちゃった。コロッと死ねたらいいけど、こればっかりは自分で決められないからね。でも、92歳までは現役でいきたいです。

 

「日本にはもっとやめる自由もあっていいよね」

―― 先生は、人生を謳歌している方だなと感じるんです。フェミニズムというと「あれもやっちゃダメ、これもやっちゃダメ」と誤解している人が多いですが、本当は「あれもやっていい、これもやっていい」ということなのかなと、先生を見て思います。

田嶋 その通りです。別の言い方をすると、選べるということですよ。結婚制度にしてもハイヒールにしても、自分がそれを快適だと思って、自分らしくいられると思えば選べばいいんです。その代わり、やめる自由もあっていいよね。日本はなかなかやめる自由がないから、そこだよね。選択の自由って大事じゃないですか。

 だから唐突のようだけど、政府にももう少し頑張ってもらわないと。このところ20年くらい法律を男女平等のものにせよって国連から勧告を受けてるけど、動かない。動く議員がいない。その結果、日本のジェンダーギャップは149カ国中110位。

 たとえ経済的には世界のトップクラスでも、女性差別のうえに築かれたトップじゃ恥ずかしいじゃないですか。若い人たちがSNSやTwitterで民法上の女性差別を論じてみたらいいと思いますよ。夫婦別姓1つ実現してないんですから。女性に対する暴力も野放しだし。

 法律上の女性差別撤廃と女性の頑張りは車の両輪みたいなものですからね。……最後はやっぱり政治への苦言になってしまいましたね(笑)。

プロフィール
1941年4月、岡山県生まれ、静岡県育ち。津田塾大学学芸学部英文学科、同博士課程を経て津田塾大非常勤講師に。元法政大学教授。元参議院議員。英文学者、女性学研究家。
フェミニズム(女性学)の第一人者として、またオピニオンリーダーとして、マスコミなどで活躍。最近は歌手活動や「書アート」活動も。『愛という名の支配』(新潮文庫)など著書多数。

#1 「母が原点」田嶋陽子が明かす“私がフェミニストになった日”
#2 “非難の嵐”でも田嶋陽子がテレビに出続けてきた理由

 

写真=白澤正/文藝春秋

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