例えば、日本でおなじみの人物でも、「即位礼正殿の儀」に参列するため来日して10月24日に安倍首相と会談した李洛淵首相は「4・偽装転入」、日本との外交交渉に最前線で当たる康京和・外交部長官は「2・不動産投機」「4・偽装転入」に加え、子どもの二重国籍などの疑惑を抱えている。疑惑が持たれている人物は長官級だけをみても10名を超えるが、それでも大統領は指名を強行した。自ら打ち立てた指針を自ら破り捨ててしまったのである。
もちろん、先日辞任した曺国氏も同様だ。前代未聞の5回もの入隊延期をしたという息子の兵役問題、妻の不審な不動産取引、偽装転入疑惑、税金滞納および論文剽窃疑惑など、大統領が就任当初に掲げた「任命しない条件5項目」の全てに当てはまっていた。それにもかかわらず任命を強行し、結局は不名誉な辞任劇となった。
文大統領の人事をめぐる「約束不履行」はこれだけに留まらない。政権の目玉政策である検察改革をめぐっても、尹錫悅・現検察総長を任命する際にも「生きた権力(現政権)に遠慮するな」と注文し、国民は大統領のこの言葉を支持した。ところが、曺国前長官の疑惑が次々と明るみに出た9月28日、文大統領は「検察改革を求める声が高まっているという現実を検察は自省して欲しい」と捜査への警告ともとれる発言をし、続く30日にも「検察総長に指示する」という露骨な表現でその捜査に注文を付けた。曺国前長官のスキャンダルそのものだけでなく、この「手のひら返し」にも多くの国民は落胆していたのだ。
「まともな思考と精神が麻痺した者の奇怪な醜態」
最後の「裏切り」は北朝鮮との関係だ。優先課題に挙げられながら、南北関係は一向に改善していない。文大統領が折に触れて友好を訴えても、北朝鮮のミサイル実験が止まらないどころか、今年に入ってからは、北朝鮮政府系メディアから文大統領に対しての激しい罵倒が続いている。文大統領の思いとは裏腹に、北朝鮮に足下を見られてしまっているのだ。
6月28日、北朝鮮の対南宣伝サイト「わが民族同士」は、韓国に対して「(朝米対話の)仲介など必要ない」とした上で、文政権の対応について、「まともな思考と精神が麻痺した者の奇怪な醜態と言わざるを得ない」と、文大統領に“出しゃばってくるな”とばかりに批判を続けた。