文在寅政権が支持率低下に喘いでいる。韓国国内では10月31日、文大統領の腹心、曺国(チョ・グク)前法務部長官の弟が、妻や親族の男性に続き逮捕され、身内のスキャンダルが収まらない。外交に目を転じても、11月16日からチリで開催予定だったアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の中止を受け、安倍首相との首脳会談の可能性も消え、「反日外交」の清算に手間取っている。

 ただ、就任時に8割を誇った支持率が半減した文政権の窮地は、目先のスキャンダルや外交関係の行き詰まりによるものではない。5年任期の折り返し地点を迎えて、ここまでの政権運営の矛盾や限界が露呈した結果なのだ。韓国国民が失望した文在寅政権の「3つの裏切り」をレポートしたい。

韓国国会で演説する文在寅大統領。いま窮地に立たされている(10月22日) ©共同通信社

雇用統計が急激に改善した「残念な理由」

 まず、経済をめぐる「裏切り」だ。文政権最大の課題とされた経済戦略は、最低賃金の引き上げなどを行って所得格差を是正し、成長を目指すという政策だった。象徴的だったのは、9月16日の青瓦台首席・補佐官会議での文在寅大統領の発言だ。

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「韓国の経済は正しい方向に向かっている」

 この発言は、9月に統計庁が発表した8月雇用動向統計を根拠とした見解である。統計によると、8月の就業者数は前年同時期に比べ45万2000人増加し、雇用率も統計開始以降、歴代最高を記録したという。

 だが、大統領の発言に頷く韓国人はほとんどいなかったにちがいない。一般国民が肌で感じている就業・雇用状況は、大統領の認識とはかけ離れたものだからだ。ではなぜ、国民が景気好転の空気を感じられずにいるのに、「数字」だけは過去最高という極端な好成績を示しているのだろうか。