この数字の「内訳」を詳細に確認していくと、その理由が見えてくる。例えば、前年同時期(2018年8月)の就業者増加数はわずか3000人。ここから45万2000人までに大きく数字を伸ばしたのだが、その内訳は60歳以上の就業者数が39万人と大部分を占めた。働き盛りと言われる世代、30~40代の就職者数は23カ月連続で減少している。
実は韓国政府は「公共勤労」という形態で高齢者たちを超短時間勤労者(1週間当たり1~17時間)として雇用し、賃金を支給している。いいかえれば、税金で雇用人員数を“買う”のだ。1日あたり2~3時間の労働で1ヵ月に2~3万円を受給する高齢者を、政府や自治体が税金で雇用し、「就業率が上昇した」と宣言しているのである。
高齢者の「公共勤労」のための政府予算は9220億ウォン(約850億円)。来年度にも1兆2000億ウォン(約1100億円)を計上している。就業率の改善は錯覚に過ぎないことは明白だ。この雇用統計をはじめ、経済をめぐる文政権の苦しい抗弁は、国民に見破られようとしている。
日本でおなじみの政権幹部にも「疑惑」
2つ目の「裏切り」は、国民が文大統領に期待していた「朴槿恵・前大統領にはないクリーンさ」を実現できていないことだ。
文大統領は、政権発足当時の挨拶の中で、次に示す5つのうちのいずれかに該当する人物は公職に任命しない方針を表明した。
「1・兵役逃れをしている人物」「2・不法ギリギリの不動産投機で私財を肥やす人物」「3・脱税をする人物」「4・名門校の学区に偽装転入して子どもを入学させる人物」「5・論文を剽窃する人物」の5タイプである。朴槿恵政権をはじめ、これまで韓国の政治家や高級官僚の間でこういった行為が蔓延していた実情を踏まえ、そこから距離を置く政権であることをアピールしたのである。
ところが、この指針は当初から守られることはなかった。内閣の要職についている人々について、この5つの条件に該当しているという疑惑が次々と浮かび上がってきたのだ。