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日本の再生医療政策は一流科学誌から批判されている

 さらに、日本が国策として進めている再生医療に関しては、少数の患者で有効性が出ている“雰囲気”さえあれば、他の治療と統計的に比べもせず早期に承認し、保険適用を行う特別な法律(再生医療推進法など)まで作られている。たとえば心不全に用いるハートシートでは、7例に使用し2例は悪化、5例は良くも悪くもならない、という臨床試験結果で「有効性が推定される」との評価になり、1470万円の薬価がついて世界初の心不全に対する再生医療製品として発売された。

 海外の医者や患者がこのデータを見て、自国でもぜひ使いたいと思うだろうか? 実際、一流科学誌ネイチャーの編集部は、こうした日本の再生医療政策は未熟かつ不当であり(premature and unfair)、やり方を何としても再考しなければならない(Japan’s government must rethink its approach)とたびたび強い批判を行なっている。米国の一流科学誌サイエンスでも、日本の再生医療政策は、世界レベルで予期しない有害な結果につながる(unforeseeable, detrimental consequences)として深刻な懸念を示す論説が掲載された。

©AFLO

 これに対して、厚生労働省の役人や大学教授たちは、ランダム化比較試験は必要ないとまで公言し、反論している。海外では「研究段階」としか認めてもらえない治療について、日本国家としてお墨付きを与え、一部の営利企業に公金を注ぎ込むのだから、ある意味では血液クレンジング療法よりたちが悪いとも言える。

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 血液クレンジング療法にまつわる今回の炎上事件は、医療のエビデンスとはいったい何なのか、目を向けて考えるよいきっかけになるだろう。いまこそ、日本の医療界の矜持が問われているのだ。