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JAL国際線の「赤ちゃん可視化」は子連れヘイトを助長するのか

子育て世代がカンッカンに怒っている理由

2019/11/11
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抱っこひも外し、ベビーカーを蹴られる被害も多発するなかで

 しかし一方で、JAL側から考えてみれば、子どもの泣き声をめぐっての利用客同士のトラブルをできる限り防ぐためには、これ以外の手はなかったのではないか、とも思います。機内で問題が起きれば、離陸ができない事態にもなりかねませんし、最悪の場合、罪のない子どもに危害が加えられる可能性だってあるわけです。

 残念ながら、世の中には弱いものを見つけるやいなや、病的なまでにストレスのはけ口にしようとする人間は実在しています。少し前に話題になりましたが、人ごみの中で赤ちゃんの抱っこひものベルト部分を外すイタズラ、いや、殺人未遂も多発していますし、赤ちゃんが乗っているベビーカーを蹴られる被害も少なくないようです。

©iStock.com

 こうした事件や事例が数多くある以上は、企業側としても、子どもを連れた利用客を少しでも安全な環境に置くために、何かしらの対策を講じなくてはならなかったのでしょうし、その最善の方法が「幼児マーク」だったのだと思うのです。

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 もちろん、子ども連れの利用客から、反対意見ばかりが寄せられているわけではありません。肯定的な意見の中には「予約段階で『赤ちゃんがいるんだな』と分かってもらえている人が近くに座る方が、少しだけ心理的負担が軽い」という声もあります。まぁ、そもそも「なぜ子どもを連れているだけでそこまで肩身の狭い思いをしなければならないんだ……」とは思いますが。

寛容な社会であれとは思えど

 個人的には、子ども連れの利用客、そうでない利用客のそれぞれの立場から考えても、今回のJALのサービスには「おおむね肯定的」です。子どもの泣き声にイラついた人に、自分の子を攻撃されるリスクを減らせるならありがたい(そんな人がいない社会が一番いいんですけど、残念ながらそういう人はいるので)ですし、泣き叫ぶ声が苦手で強いストレスを感じてしまう人にとっては、あらかじめ、できるだけの対策ができます。

 よくよく考えてみると、私たちがJALに払っているお金は、運賃と、明記されているサービスへの料金です。過度のサービスや、「機内で静かに眠ることができる権利」を100%保証するためのものではないことは、再度胸に刻み込んでおかねばならないと自戒を込めて思います。

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 子どもって、本当に可愛いと思いますし、「子連れのお母さんお父さんたちが少しでも楽に過ごせる寛容な社会であればいいな」と心から思っています。我々が社会で共存している以上は、何かしら互いに迷惑をかけることもあるでしょう。

 誰かにストレスを感じたときに、解決策がないのなら「仕方がないことは仕方がない」と寛容にならなければならないことも多々あります。それが「社会」で生きることだと思うのです。誰の責任でもない、誰も悪くないことは、たくさんあるはずなので。

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