そもそも子どもが泣くのは仕方がないこと
私自身は、乗り合わせた子どもが泣いていても特に気にしたことがなかったのですが、子どもの泣き叫ぶ声が苦手な人にとっては、たとえ思いやりを持ったとしても、長時間のフライトが苦痛になるのは回避できないことであり、耳栓をしたとしても音がすべてカットされるわけではないので、これまで解決が非常に難しい問題だったのだろうというのは、想像にかたくありません。
しかしだからと言って、子どもやそのお母さんやお父さんが悪いわけでもないし、そもそも子どもが泣くのはある程度仕方がないことである以上、こうした話は誰かに責任の所在を求める性質の事象ではないように思うのです。
この件に関しては、議論についてどちらが良い悪い、という話に収束させるのではなく、なぜJALは「ベビーおでかけサポート」を始めるにいたったのか、その根本にある背景を読み解く必要があるのではないでしょうか。
12時間もトイレの前で子どもをあやし続けた
前出の知人夫婦は、出張でアメリカに向かう機内で、12時間以上もの間ほぼずっと、トイレの前に立って子どもをあやしていたと言います。「どうしてそこまでして……」と驚いた私に、知人は「被害妄想かもしれませんが」と前置きしたうえで、複雑な心境を語ってくれました。
「日系航空会社で子どもを連れて海外便に乗ると、1人のときと比べて、明らかに冷たい視線が突き刺さります。こちら側に聞こえるように大きなため息をつかれると、なんだか『チッ、子連れで長距離便なんて、どれだけ常識がない親なんだ』と言われているようで。私たちも必要だから飛行機に乗っているわけで、本当は乗りたくないんです……」
そんな風に彼らが肩身の狭い思いをしている中で、くだんのJALのサービスが開始され、夫婦や、子育て世代の当事者は「ああ、これはトラブルが起きた際に『だから事前に子どもがいるって言ってたでしょ』とJALが逃げ道を用意する目的なんだな」と感じた。それが今回、子育て世代から「ベビーおでかけサポート」への反発が起きた経緯のようなのです。
言われてみれば、子連れのお母さんやお父さんが、公共の場でものすごく申し訳なさそうに子どもをあやしている姿は幾度となく見たことがあり、それは本当に不憫だなと、私自身も常々思っていることでした。