文春オンライン

GSOMIA失効を前に……日韓首相の10分の対話を過剰に持ち上げる、韓国側の“焦り”とは

2019/11/08
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「徴用工問題解決への一歩として取り上げるべきという意見と、日本側が『1965年の日韓請求権協定を遵守してくれ』と原則論を貫いた点を考えれば次の段階は厳しい見通しなので、文政権にもう一歩先を要求するためにも冷静に淡々と報じたほうがいいという意見が拮抗しました」

 そもそも日本と韓国の発表内容も異なった。

 時間も韓国が「11分」としたのに対し、日本は「約10分」とし、韓国では、「安倍首相の発言の中にはすべての可能性のある方法を通して解決案を模索するように努力しましょうという趣旨のものがあった」と伝えられたが、日本は、「総理は従来のように外交当局間で懸案を解決したいという趣旨を述べた」としている。

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文在寅が日本への誠意を見せた裏では……

 先の論説委員は、「進歩系紙がすわ、解決へ動くかのように報道をしたのにはワケがある」とこう指摘する。

「23日0時が期限のGSOMIAを延長するか否かという選択が迫る中、米国からの圧力も高まっています。しかし、青瓦台は、日本が輸出規制を解除しなければ延長はしないという雰囲気。

 米国からも(GSOMIA)延長に圧力がかけられていますから、日本から輸出規制解除をひきだすために、まず、一連の問題の発端となった徴用工問題の葛藤を解消する意志があることを示すことが急務とされた。文大統領が安倍首相とのやりとりを求めて、韓国側も努力しているという姿を見せることが必要だった。

言葉を交わす安倍晋三首相と文在寅大統領 ©共同通信社

 進歩陣営がこぞって好意的に報じたのは、支持層に、文大統領自ら、日本に誠意を見せたことを強調するため。それにより輸出規制が解除されれば、GSOMIAも安全保障のために延長したと納得させられます。さらに、“曺国事態”後に進歩陣営内部で葛藤が深まっている(進歩)陣営の士気を高める意味もあったのではないでしょうか」

「曺国事態」は「曺国対戦」とも

 文大統領の支持率は11月に入り、わずかに回復したが、それでも不支持が支持を上回る低空飛行が続いている(支持率44%、不支持率47%。韓国ギャラップ、11月1日)。

「曺国事態」により進歩陣営内部で生まれた葛藤と亀裂は深刻とされており、進歩系メディアは最近この問題を大きく取り上げている。ハンギョレ新聞は、「曺国事態が触発した進歩陣営分化……社会改革、新しい空間が必要」(11月1日)という記事で、市民団体に所属する40代の活動家のこんなコメントを紹介している。