過去の汚点もあえて描き込む
同時に、このドキュメンタリー・シリーズのスタンスもまた、明確に示されている。端的に言うなら「すべて見せます」。
野球賭博問題の発覚を受けて球団幹部が会見で謝罪するシーンが盛り込まれているが、触れずに済ますことも十分可能だったはずだ。もちろん、密着ドキュメンタリーと謳う以上、ヴェールに覆われてきた内部をありのままに提示する姿勢は作品の大前提だが、過去の汚点をあえて凋落の一つの象徴として描き込んできたところに、ジャイアンツの明瞭な意思を感じた。初回に明らかにしたフルオープンのスタンスが、次回以降はどのような形で作品に投影されるのか、期待したい。
戦いの舞台裏や、選手や首脳陣の素顔、本音を知りたいというファンの期待にも応えうる内容になっている。たとえば、TVタレントから未経験のコーチへと立場を変えた宮本和知、元木大介の両氏が指導者として初のシーズンをどう過ごしていたのか、その仕事ぶりや選手との関係性が記録されている。多くのファンが知りたかったところでもあっただろう。
原監督の手腕を知る教材としても
初回の主役は、4年ぶりに復帰した原辰徳監督だ。ペナントレースのさなかに重ねたインタビューが、本編最大の見どころと言える。采配に込められた意味を指揮官本人が語り、そこから原野球の真髄が浮かび上がってくる。ファンから「弱くなった」とため息交じりに言われてしまうジャイアンツを、就任からわずか1年でリーグ優勝できるチームにまで引き上げた。その手腕を知る教材としての価値もあるのではないだろうか。
作品の内容に対するコメントはこの程度に留めておくとして、こうした作品が世に送り出されたこと自体が、筆者にとってはニュースだった。