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戦いの舞台裏から過去の汚点まで……巨人ドキュメンタリーに見えた「ある真実」

2019/11/12
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新たなファン獲得のために

 近年、球団による情報発信のあり方は大きく変わりつつある。ベイスターズでは、DeNAに経営権が譲渡されて以降、シーズンに密着したドキュメンタリー作品が公開されるのが恒例になっているし、ファイターズも今年2月に、北海道移転15周年を記念したドキュメンタリー映画を公開した。そのほかにも多くの球団がTwitterなどのSNSで公式アカウントを開設し、球場の観客席やテレビからは窺い知れない選手の姿などを発信するケースが多くなっている。

©️読売巨人軍/DAZN

 そうした球界の流れにあって、ジャイアンツは決して先進的ではなかったように思う。そもそも世間からの注目度やメディア露出の少なさに悩むチームではないからだ。本稿序盤で触れたような特別な球団としての自意識も、内部が赤裸々に映し出されることをよしとしなかったのかもしれない。

 転機となったのは、今年、読売グループとDAZNが結んだ包括提携だろう。ジャイアンツにとっての提携の意義は「新たなファンの獲得」。試合の勝敗だけでなく、苦悩や努力などのプロセスを知ることでファンの球団に対する親しみは増すから、このドキュメンタリーの制作と公開は、包括提携の目的にかなったプロジェクトだと言える。

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©️読売巨人軍/DAZN

 かつてセ・リーグの各球団を地上波放映権料で潤わせてきたジャイアンツが、半ば自ら主体となって、内実を外に向けて発信し始めた。

 強調的に書くならば、ジャイアンツまでもが、そうした方向性に舵を切る時代だということだ。「球団のメディア化」とでも呼ぶべき流れは今後、より顕著に強まっていくのではないか。

 DAZNとの新たなタッグによって産み落とされたドキュメンタリーそれ自体が、「ファンにとってより身近な球団になっていく」という、ジャイアンツからのメッセージなのかもしれない。

 本作はすでに、10月25日より<Episode 1>がDAZNで公開されている。<Episode 2>(11月8日公開)以降、最終回の<Episode 7>までが12月にかけて順次公開される予定だ。

©️読売巨人軍/DAZN
戦いの舞台裏から過去の汚点まで……巨人ドキュメンタリーに見えた「ある真実」

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