まさに惰性の『3』 州知事就任後の『4』
そこへ放たれたのが『ターミネーター3』(03)。ジェームズ・キャメロンは作品の権利を手放してシリーズから完全離脱している状態で、シュワ自身もかねてから興味のあった政治活動に移行しようとしていたわけだが……なんだかんだいっても出た。演じた3体目は、心理分析回路が組み込まれたT-800のアップデート版T-850。未来から送り込まれた理由が『2』で完結した物語をひっくり返すような代物で、妙味となるはずの心理分析回路も活きておらず、『1』『2』の恐怖、感動、興奮を凌ぐものも特になし。まさに惰性の第3弾だったが、シュワの12年ぶりとなるシリーズ復帰はどうしても気になるということで世界興収4億3000万ドル(469億円)のヒットとなったが個人的にはなんだか弾けられない作品であった。
2003年11月17日にシュワが第38代カリフォルニア州知事に就任してから6年、『ターミネーター4』(09)が作られた。人類と機械軍が激突している2018年のロスで、ジョン・コナーが抵抗軍のリーダーになるまでをカイル・リースとの出会いなどを交えて描く物語で、シュワ演じるターミネーターが登場するのかしないのかと話題に。嫌な予感がしつつもやっぱり気になって観に行くと、現れた4体目は試作段階のT-800。それは別に構わないのだが演じるのはシュワ本人ではなく、CGで再現した若い頃の彼の顔面に肉体がシュワと酷似していることから遠縁ではないかとも噂されるボディビルダーのローランド・キッキンガーの肉体を合成したもの。CG製ゆえに微妙にぎこちない動きをするフルチンのツギハギT-800に、なんだか切なくなってきた覚えがある。
そこまでして出たいのかと切なくなる5作目
2011年1月3日に知事を離任したシュワは、俳優業に復帰。『エクスペンタブルズ』シリーズ(10~14)と『大脱出』(13)でライバルだったシルヴェスター・スタローンと共演を果たし、『ラストスタンド』(13)や『サボタージュ』(14)といった快作にも主演するが、さすがに往時の人気を取り戻すことができず。そこでスターとしての存在感を改めて示したいと挑んだ『ターミネーター:新起動/ジェニシス』(15)だが、サラとカイルが1984年から2017年へ時空移動したり、パラレルワールドが発生したりと話が支離滅裂の極み。
加えてなんとも痛々しかったのが、老境に差し掛かったシュワの姿。彼が演じる5体目は1973年から40年以上にわたってサラを守るT-800で、シュワ本人の年齢(当時68歳)を考慮したかのようにきちんと老いていくのである。「表皮は生体なので老化する」との設定が言い訳に、「古いがポンコツではない」というセリフが強がりにしか聞こえず、そこまでして出たいのかと切なくなると共にキャメロンが未来から強大な権力を持った者を送り込んで『3』『4』あたりでシリーズを止めてくれないかとも思ってしまった。