寄付が集まった最大の理由
フランスは文化の国だから、といいたいが、実は寄付には実利がある。例えば個人が公益財団に寄付すると、課税所得の20%を限度に66%の所得税額が控除され(5年間繰り越し可)、会社税(法人税)や富裕不動産税も大幅に控除される制度がある。さらに前出の法律で、個人の寄付1000ユーロまでを75%税額控除まで引き上げた。つまり、100ユーロ寄付しても実際には25ユーロだけを支払ったのと同じことになる。
この控除によって国の税収が減るわけだが、会計上その分は国が補填したとみなし補助金の計算に入る。つまり、たとえば寄付が10億集まって、国が7億払ったといっても、総額17億のお金があるわけではなく、10億だけで、寄付した人は税金が安くなるので実質そのうちの3億、そして国が7億負担したことになる。
それから寄付について、もうひとつ注目したいのは、実際に行われる工事だけではなく「建物の保存修復と国有の什器およびこれらの作業を行うための職業研修」を使途としていることだ。不謹慎は承知でいうが、教会建築のノウハウが失われつつある現在、この火事はいいチャンスになったといえる。
「ノートルダム大聖堂の復讐」
さて、首里城の火災の3日前、10月28日に大西洋岸のスペイン国境に近いバイヨンヌ市のイスラム寺院で2人の信者が発砲され重傷を負うという事件がおきた。犯人は、84歳の男で放火しようとしたところ、この2人に出くわし、銃撃したのである。その動機は「ノートルダム大聖堂の復讐」だった。
火災直後からアラブ人が放火したというデマが拡散していた。当局はすぐに否定し、その後の検証でもその可能性は完全に打ち消されている。しかし、かねてからヘイトスピーチを繰り返していた犯人はまったく聞く耳もたずであった。
残念ながら、ネットを見ると、首里城の火災でもずいぶんおかしなヘイトスピーチやデマが日本で溢れかえっている。