オタク女子ユニット「劇団雌猫」による、恋愛エッセイ集『誰になんと言われようと、これが私の恋愛です』。趣味に忙しい女性達がそれぞれ匿名で、恋や結婚にまつわる心の内を文章にしています。その中から「マッチングアプリに半年間登録した、20代後半オタク女性」によるエッセイを特別に公開します。
●著者プロフィール スカンクさん
(年齢)28歳
(初恋の相手)天王はるか(「美少女戦士セーラームーン」)
◆◆◆
20代も半ばの夏、付き合っていた彼氏に「銀英伝と俺、どっちが大事なの?」と聞かれた。
当時私は『銀河英雄伝説』という小説が原作の舞台にドハマりし、毎週全国の劇場を行脚していた。ちょっと彼氏を放置しすぎたかな、と思っていたタイミングで深刻な顔で聞かれたのが冒頭のセリフである。
「もちろんあなたの方が大事だよ!」と即答できたらよかった。しかし舞台のことで頭がいっぱいだった私から咄嗟に出てきた言葉は「とりあえず千秋楽まで待って」だった。結果すぐに浮気され、5年以上の交際はあっさりと終わりを迎えた。
浮気されたことは男を見る目がなかったと思えば割り切れる。問題は「明らかに趣味より男を愛せなかった」ことだ。浮気を知った時より銀英伝の千秋楽の方が泣いた。一応適齢期なのに、この調子じゃ今後の恋愛も結婚も絶望的だ。どうするんだ私。
「これなら自分にもできるかも」
そんな時、婚活マッチングアプリ体験記ブログを読んだ。その婚活アプリは従来の出会い系とは違い、運営に免許証まで提出する安心設計。また趣味や価値観を軸にしたコミュニティもあり、年齢や収入以外にも細かな条件で相手を探すことができるそうだ。「これなら自分にもできるかも」と思った。
オタクにありがちな価値観かと思うが、私は「恋愛を目的とする紹介イベント」への警戒心は強いが、「インターネットで出会った趣味の合う人とのオフ会」に対するハードルはおそろしく低かった。合コンで自分の趣味を隠し、相手の価値観を探りながら会話するより、最初からオタク趣味があることを確認した上で誘ってくれる人と会う方が気が楽だ。すぐに彼氏ができなくてもいいから、とりあえず男性と会ってみよう。そんな気持ちで登録した。