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2019/11/14

genre : ニュース, 社会

 純粋にカネのためならば私は保守業界に今でも身を置いていたであろう。彼らと永別したのは、彼らの表現者としての矜持の無さと、物書きや発信者としての知性レベルの貧弱さ、そして界隈全般に漂うむき出しの差別感情に対する、身体的な嫌悪からである。

 数年前、ある右派ネット番組局と永別したときの話。局の某責任者に「古谷君は最近ウチを軽視しているようだ」からはじまって小言が多くなり、最終的には事実上のクビを宣告される段になって「古谷君、これから生活はどうするんだい?」などと嫌味を言われたことがあった。でも大丈夫。その後、なんとか生きているし猫3匹を養って庭いじりをやる余裕が出るくらいの仕事量はある。

 あの時、平身低頭して右派ネット局に齧り付き、面従腹背でニコニコしながら「保守ムラ」の老人たちに追従する道を取っていたならば、私の財布の中身と貯金残高は潤っていただろうが、ニンゲン・古谷経衡はその時点で死んでいただろう。

「真の保守」と称された西部邁氏の自裁現場・多摩川を訪れた筆者

「愛国ビジネス」4パターン

 さて、話を戻そう。ネット右翼に寄生される「保守系言論人」はどうやって生活をしているのか? 大きく分けて4パターンに分かれる。

(1)出版専業の保守系言論人として(地上波露出なし)
(2)信者を囲い込む(各種勉強会、私塾等を主宰)
(3)中小零細企業経営者などのパトロンを付ける
(4)活動家方面に軸足を置いて任意団体を設立し、寄付や会費を募る

 である。多くの場合、(1)、(2)、(3)は単独では成立せず、これらの混合型が圧倒的である。(4)は、(1)~(3)にすらなれない、「保守業界(ムラ)」の中でも底辺に位置する言論人がとる常套パターンである。

 では、(1)からみていこう。出版業界は1990年代中盤にその最盛期を迎えたが、いわゆる活字離れ・書籍離れと、書店数の漸減により往時の面影は無く、現在その市場規模はピーク時の半分以下(約1兆3000億円)にまで激減した。

 こういった出版業界の大不況が「悪貨が良貨を駆逐する」のごとく、良質な本を滅失させ、トンデモ本やヘイト本を粗製乱造させる温床となっていった。嫌韓本もこの中に含まれるが、実際にこう言った類の本は、ゼロ年代後半~2010年代前半に雨後の筍のごとく出ては消え、おおむね2015年以降はヘイト本、嫌韓本ですらもなかなか売れないようになった。

 とはいえ、韓国・中国・朝日新聞をぶっ叩くというスタイルの「ホシュの定番本」は、校閲もろくに通さないケースが散見され、筆者の主観と偏見によってスピード出版できるという観点から、現在でも重宝される傾向にあるのは事実である。