昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

「無断転載対策に『天安門事件』をブチ込め?」日本エロ同人業界と中国翻訳部隊の果てなき闘争

2019/10/28

 今年10月下旬、ちょっと笑えるニュースが中華圏で注目を集めた。日本の映像制作サークル「同人アキバ出版」が配信している自主制作成人向け動画のサンプル画像についての話題である。

 このサンプル画像はコスプレ姿の若い女性によるさまざまな成人向け表現からなっていた。画像の端には常に「NO UPLOAD」「NO P2P」など、動画データの違法アップロードを禁じる文言が書かれているのだが……、なぜかその下に「六四天安門事件」と書かれていたのだ。

 言うまでもなく、六四天安門事件(天安門事件)は1989年6月4日に中国の北京で発生した、人民解放軍による大衆デモの武力鎮圧事件だ。多くの犠牲者を出したこの事件は、中国共産党の統治の最大の汚点のひとつであり、中国国内では深刻な政治的タブーとみなされている。

この事件を報じる、カナダのケベックの華人メディア記事。同人アキバ出版、カナダにまで知られてしまった

フランス国際放送、同人アキバ出版に食いつく

 近年の中国はネット検閲が非常に厳しく、「百度」などの中国系の検索エンジンでは天安門事件を検索してもまともな結果が表示されない。また、中国系メッセージアプリ「微信」などで事件に言及したり関連画像を投稿したりすると、アプリの挙動が不自然になる、グループチャットの管理人が尋問を受けるなどの問題が生じる可能性がある。

 こうした事情もあってか、日本の一部のネットユーザーの間では、六四天安門事件という言葉自体が(事件の実態への理解から離れて)「中国で嫌がられる言葉」として知られつつある。今回、同人アキバ出版が動画のサンプル画像に「六四天安門事件」を含めたのも、相次ぐ中国側による違法アップロードを防ぐための苦肉の策だったらしい。

 この一件は中華圏の一部のメディアで話題になり、フランスの国際放送『ラジオ・フランス・アンテルナショナル(RFI)』の中国語版ネット記事(10月22日付け)でも報じられた。

 RFI記事によれば、エロ画像にセンシティブな単語をぶち込んだことに、中国のネット上では小粉紅(中国版ネット右翼)から怒りのコメントが噴出。対して「違法アップロード防止にこういう手法を取るとすぐに小粉紅が湧いてきて罵りはじめるのは笑える。この手法は効果があるかもね」と、同人アキバ出版側の機転を評価する意見も書き込まれていたという。