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「1週間以内に無断翻訳版が公開されてしまう」

――同人作家として、中国側の無断翻訳や違法配信にはどのくらい悩まされていますか?

H:ひどいんですよ。発行から1週間も経たないうちに、ネットに翻訳版が上がっているんです。僕の側もDLsiteの削除代行サービスを使ったり、「Google八分」になるように通報をおこなったりと対応しているのですが、たとえあるサイトの無断転載を潰しても、しばらく経つと復活している。完全にいたちごっこです。

 売り上げについては、どの程度影響してるのかは計測しようがなく、今のところ不明です。ただ、人づてに聞いた話では、違法アップロードがはじまると売り上げが下がるという話もあるんですよね。

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艶めかしいシーンの背景にいきなり登場する「法輪功」の文字。なかなかシュールである。ハルカチャンネル氏の今回の作品より

――作中に中国語のタブーワードをちりばめたくなるだけの事情はあるわけですね。

H:今回の件は、手間がかからない方法で違法アップロード者に負担をかけられないかと、試してみたんですよ。効果の有無も含めて一種の実験でした。実は他にも、タイトルを極端に長くしてみる、どこの販売サイトから流れているのかを確認するために、各サイトに配信する作品ごとに小さく販売サイトの名前を入れてみる、といった対策も試みています。

 今後は、無断翻訳者が翻訳した内容の中国語をそのまま使って、自分の作品の「中国語版」として正規販売することも考えています。彼らは「俺たちが翻訳したものだ」と怒るかもしれませんが、権利的には自分のほうが強いですからね。

タブーワード混入は効果があった?

――なるほど。では、作中の背景にタブーワードを加えたことで効果はありましたか?

H:どうやら、最初に違法アップロードをおこなった人物はタブーワードに気づかずにアップしてしまったらしく、彼らのコミュニティ内で叩かれているようでした。結果、そこの掲示板は政治的な話題でひどく荒れたらしく、わざわざ作者の僕に苦情を言ってきた人もいましたよ。違法アップロードをすべて防ぐことは困難ですが、それをおこなう人たちに低コストで負担をかけられたという意味では効果的な対策だったと思います。

――おお! 効果があったんですね。次はやはり、男性キャラの顔を習近平に変えるしか……。

H:それも面白いですが、僕はあくまでもエロ同人を描いていきたいので、「実用」に差し支えがある描写は難しいですね。毛沢東や習近平を「竿役」にしたら、日本人はエロを感じる前に笑っちゃうと思うんです。ギャグ漫画ならいいんですが、エロには向かない。

なぜかキャバクラのバーカウンターに「習小近熊平(習近平のプーさん)」の文字が

――確かに、習近平がハッスルしているエロ漫画で興奮するのは読者側にかなり訓練が必要そうですが、そんな訓練はしたくないですしねえ……。ところで、作中の「香港加油」や習近平関連のワードは、どうやって知ったんでしょうか?

H:「香港加油」や「天安門64」が検閲対象だというのは、インターネットで調べて知りました。そこで、これらを書き入れた漫画のコマを「これがワイの違法アップロード対策や」とツイートしたところ、非常にバズりまして、海外サイトでも取り上げられた。

 結果、香港・台湾・中国の人たちが私にたくさんメッセージを送ってきたんです。抗議する人、応援やお礼を言う人……といろいろいたんですが、なかには私が知らなかった他のタブーワードを教えてくれる人もいまして。「習小近熊平」は、検閲対象である習近平のあだ名が「クマのプーさん(維尼小熊)」だと知って、自分でアナグラムを作りました。