「愛国ビジネス」の実態に迫った衝撃の小説『愛国商売』(小学館文庫)をこのたび上梓した古谷経衡氏(37)が、作品の舞台裏を描く集中連載。第2回は、保守系言論人が主催する各種勉強会、いわゆる「私塾」の旨みを解説する(全3回の2回目/#1、#3を読む)。
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「信徒囲い込みビジネス」こそ生活の中核
ネット右翼に寄生される「保守系言論人」はどうやって生活をしているのか? 前回4パターンを紹介した。
(1)出版専業の保守系言論人として(地上波露出なし)
(2)信者を囲い込む(各種勉強会、私塾等を主宰)
(3)中小零細企業経営者などのパトロンを付ける
(4)活動家方面に軸足を置いて任意団体を設立し、寄付や会費を募る
そして地上波テレビには滅多に出ない(出られない――ただしネット番組を除く)が、出版の世界の中では不況を救う救世主として大きな権勢を誇る(1)「出版専業の保守系言論人」の生活や収入について書いた。
前回、嫌韓本を20万部当てると推計で、その印税収入は約3,000万円としたが、正確に言えばここから翌年度以降、各種税金が差っ引かれるので、いかに原価がタダ同然だったとしても、3,000万円が丸々著者の手元に残るわけではない。
よしんば、ほぼ全額が残ったとしても、3,000万円の財貨で5年、10年は安泰だとしても、50年は持つまい。そこでこういった保守系言論人は、出版という一発屋的な「水モノ」に頼らない、「恒常的な集金装置」を創り出すことに躍起となる。それが、各種勉強会、私塾と名を打った(2)エンクロージャー(信徒囲い込み)ビジネスである。実はこの商法こそ、保守系言論人にとって最も重要な生活の中核なのである。
「貴方だけの」「特別な」「真実の」で勧誘
保守系言論人が主催する各種勉強会、私塾というのは、ちょっと前に流行った(――或いは今でも?)オンラインサロンの走りであると考えれば理解がしやすいであろう。勉強会に来たり、私塾の会員になれば「貴方だけに特別の情報を教えますよ。マスコミや学校では教えない、真実の歴史や社会や経済のことが分かりますよ」という点においてある種宗教的でもある。
特定の保守系言論人に無批判に追従するネット右翼は、磁石に張り付く砂鉄のように、こういった「貴方だけの」「特別な」「真実の」を謳う会や私塾の勧誘に弱い。元来ネット右翼は虫食い状の歴史知識しか持っておらず、体系的なオピニオンを自ら生成することができない。よってどこかで誰かが言っていた言説をコピペする性質があるから、まさしくこの勉強会・私塾は寄生者にとって格好の「カンダタの糸」である。