昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2019/11/16

genre : ニュース, 社会

「終身会員100万円より」

 私がリサーチしたところ、某保守系言論人の主催する勉強会は、一般会員年間12,000円(月額1,000円)、賛助会員年間5万円(月額約4,000円)というのがあって、まあ標準的な部類と思ったが、最後に「終身会員100万円より」と書いてあって思わずウーロン茶を吹き出してしまった。凄まじい商魂である。どこかの篤志家が1名入会するだけでただ100万円が降ってくるのだ。

 この終身会員の「終身」というのは、篤志家の寿命を言うのか。はたまた保守系言論人の寿命を指すのか。篤志家よりも早く主催者が死んだらどうなるのだろうか? 大した説明もなく「100万円より」と書くところが私にはすさまじいエセ商人の魂魄を感じる処である。

 そして当該勉強会はどうかわからないが、この手の勉強会や私塾では会費や追加費用をその場で現金にてやり取りするケースも多々見受けられる。その収入は税務申告されているのかどうか、私は知らない。

こちらは靖国神社を取材する筆者(2016年8月15日)

「中小企業経営者」というパトロン

 しかしまあ、適当に話して、アイドルでも何でもない右傾おじさんが、毎月ファンから15万とか20万とかが定期で入ってくるのだから、こんなに楽な商売はないとは思わないだろうか。

 それは私塾の参加者の主体であるネット右翼が、何を隠そう中産階級だからに他ならない。こういう私塾に参加する中年のおじさんには中小零細企業経営者が多い。さらにその中から、熱狂的に保守系言論人を思慕し、既定の会費を超えて、自分から積極的に寄進し、金銭的便宜を図ることを名乗り出てくるものがいる。先に述べた「(3)中小零細企業経営者などのパトロンを付ける」だ。 

 中小零細企業経営者の中でも、社員が10名以上100名未満、という絶妙な規模であって、しかも自身は創業者ではなく、二代目、三代目、という経営者には、この手のエンクロージャー商法に嵌って、いわれもしないのにパトロン、スポンサーを買って出る人が少なくない。

 私の知っているこの手の経営者には、わざわざ自社のウェブサイト1ページ目に保守系言論人の講演会情報などを堂々と載せていたりする例がある。その保守系言論人の講演会情報が、自社の製品と少しでも関連があるモノや話題ならばまだしもわかるが、自社と全く関係がないどころか、ガソリンとトマトジュースぐらい異質なものを堂々と併記して憚らないこの経営者の経営感覚の無さというか、異常な塩梅を疑う。

 良く調べてみるとやはり、くだんの経営者は三代目で創業者ではなかった。創業者はきっと墓の下で泣いているだろう。

 誰か1人でもパトロンを見つけさえすれば、ひょっとしたら一生食っていけるかもしれない。出版は二の次で、保守系言論人がせっせと私塾の経営に奔走するのはこうしたうま味が無尽蔵に広がっているからだ。「愛国商売」とは本当に楽な稼業ときたものだ。実に羨ましい。

#1を読む/#3に続く)

愛国商売 (小学館文庫)

古谷 経衡

小学館

2019年11月6日 発売

この記事の写真(3枚)

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー
z