「愛国ビジネス」をテーマとした衝撃の小説『愛国商売』(小学館文庫)をこのたび上梓した古谷経衡氏(37)が、作品の舞台裏を描く集中連載。最終回は、「保守ムラ」最底辺の人びとがいかに生業を営んでいるかを解説する(全3回の3回目/#1、#2より続く)。
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狙い目は「地方の市議会議員」
本稿では、保守系言論人の「愛国商売」下記4パターンのうち、
(1)出版専業の保守系言論人として(地上波露出なし)
(2)信者を囲い込む(各種勉強会、私塾等を主宰)
(3)中小零細企業経営者などのパトロンを付ける
(4)活動家方面に軸足を置いて任意団体を設立し、寄付や会費を募る
「(4)活動家方面に軸足を置いて任意団体を設立し、寄付や会費を募る」という形態を見ていくことにしよう。#1で、私はこの手法を採るのは「保守業界(ムラ)の中でも底辺に位置する言論人」であると書いたが、実際にそうである。
保守系言論人の「夢」である出版媒体で一発も当たらず、「小ヒット(1万~3万部未満での重版等)」さえ出せず(そもそも筆が遅い&文章構成力がない)……それが故にと言うべきか、#2で書いた勉強会・私塾を運営するという方法でのエンクロージャー(信徒囲い込み)商法も上手くいかない、という鳴かず飛ばずの保守系言論人は、大体においてこの活動家方面に行く。
拙著『愛国商売』の中でもある男が、右派のネットワークを通じて地方の市議会議員に立候補する策謀をめぐらす場面が出てくる。現実にも、保守界隈(ムラ)の人的リソースを最大限に活用して、人口5万~50万人くらいの、中堅都市の市議会議員に立候補して生活を成り立たせようという者は大勢いる。
むろん、市議会議員への立候補=被選挙権の行使は国民に認められた権利だ。なぜ右派のネットワークを通じて地方の市議会議員に立候補する策謀をめぐらすのか。それは選挙告示時にポスターを張ったり、チラシを配ったりする、なんやかやのボランティアスタッフが、いくら小さな市であったとしても、最低限度必要だからである。
そのネットワークは、政治的イデオロギーで結びついている保守界隈から都合をつけるのが、一番手っ取り早い。そういう目論見で、出版人にも教祖にもなれない保守系言論人は、尖閣に公務員常駐とか、憲法改正して国防軍にとか、韓国に対して物言う姿勢をとか、およそ地方議会議員としては疑問符が付くようなことをまくしたてれば、ボランティアの5名や10名は集まってくるのだから楽ちんである。
そうしてこういった者が、あっけらかんと最下位付近で当選してしまうのも現実で、これはもう、右派がどうのという以前に、日本の地方自治のあり方が問われていると思う。