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右派の政治目標「ウ台在」とは

 さらに、議員立候補の方面に行かない「保守業界の底辺」にいる保守系言論人は、右傾雑誌・SNS・ネット動画という「三位一体」の中で細々と原稿を書いて口を糊する場合が多いが、最も多いのが強烈なオピニオンを打ち出して政治活動のための寄付を募るというやり方である。

 私が「ウ台在(うたいざい)」と呼んでいる右派特有の政治活動目標がある。ウはウイグル問題の「ウ」、台は台湾独立の「台」、在は在日コリアンの「在」で、この三つのどれか一つを政治目標として強烈にアピールすることにより、原稿やネット番組での出演収入と共に、支援者からの寄付で自らの生活を支えていこうという不埒な者が使う手である。

 そもそも、これらは法人格を持たない任意団体が圧倒的で、自分のブログ兼ウェブサイトに堂々と寄付口座を明示している場合が多く、収入の実態がどうなっているかの監視体制はない。

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 むろん、ウイグル問題、台湾独立(――というか、反中国共産党)問題でまじめにやっている活動家もいるのだろうし、私は彼らの全てを否定するわけではないが、寄付の使途を公開している例を私は寡聞にして聞かないので、生活と混同してしまっていると疑われても仕方ないのではないか。

 また「ウ台在」の最後の「在」については、在日コリアンへのヘイトスピーチが主体であり、政治活動ではなく単なる差別扇動であるが、寄付から生まれたのが在特会(在日特権を許さない市民の会)であることは知っておいたほうが良いだろう。

ほぼ寄付だけで運営されていたネット放送局

 最後に、私は事実上支援者からの寄付だけで運営されていたネット放送局について小項を割かなければならないと思う。この局は、#1で「古谷君、これから生活はどうするんだい?」などと嫌味を言われた局と同一である。

©iStock.com

 この局の凄いところは、番組制作費の大半を寄付で賄っているばかりか、別口で政治団体を作り、そこでも寄付を募っていたことである。やれ「NHKを訴える」、やれ「尖閣諸島に行く船を買う」、やれ「朝日新聞を訴える」……。何か活動があると、必ず支援者から寄付を募り、しかもその額は数百万円ではなく、もっと上の、数千万円から億に到達する金額である。

 ここでも、彼らを支えるのは中高年の中産階級の男性で、自営業者が極端に多い。私は政治活動をするのにカンパを集めるのが「まるで商売の様だ」と揶揄するつもりはない。だが、時としてそういった風に思える、思われてしまうことを誰が否定できようか、と問うているだけである。

 当該局にしたところで、寄付先は番組と政治団体で厳格に分けられていると主張するが、寄付で賄われている政治団体の活動の様子を番組で紹介し、番組制作スタッフに給与が支払われているのだから自家消費といえなくもない。ようするに、民間の政治活動における寄付は、どこからが純然たる政治活動で、どこからが「商売的である」のかを線引きすることが極めて難しいという事だ。