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なぜ私は「愛国商売」と決別したか

 以上、3回にわたって、保守系言論人がどうやって生活しているのか、を省察してまとめて筆を進めてみた。実際にはもっと細かい類型があり、当然個々別々の事情が勘案されるので、私の書いたことが全ての事例に当てはまる、というものではない。

 地上波に出ることはもとより、右傾雑誌に寄稿する事すらも筆不精で面倒だが、ネット番組では好き放題なトンデモ政権擁護発言をする、という正真正銘の「自称」保守系言論人の収入源を調べていくと、一生涯働く必要がない評価額の都内一等地の土地の所有権者であり、その上に建てたビルのテナント収入で何不自由なく暮らしていたり、或いは大手上場企業を退職して悠々年金暮らしをして後顧の憂いが無いから好き勝手に差別活動をやっています、という人物もいる。

 100人の商人(あきんど)が居れば、100通りの商売がある。「愛国商売」にも、愛国の名をかさに着て、保守や祖国を叫ぶ人々の数だけ、独特の商法があると思ってよろしいが、大体が本稿で書いた通り、4つのパターンのどれかに当てはまるのが常である。しかしこの「愛国商売」を概観すると、はっきり言って他の商売よりも楽だと思う。商圏調査も要らない。客単価の向上に努める必要もない。なにより原価がかからない。

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筆者の古谷経衡氏(新宿二丁目にて)

 #1の記事冒頭で述べた通り、私は5、6年前から、かつて「同じ釜の飯を食」った人々から「カネの為に左翼(ネット右翼用語ではパヨク)に転向した」といわれる。私から言わせると、差別と品性下劣の宴会芸に堕落して転向したのはそっちの方で、私は小学生のころからタカ派で何も変わっていないと言いたい。

 なにより、カネを優先するなら今でも我慢して保守論壇(ムラ)の辺境に居を構えていたであろう。

 私は他人を騙し、或いは隣国人を傷つけてまで、ガラクタを高く売りつける商人にだけはなりたくないだけだ。そんなものは商人の風上にも置けぬ。

#1#2を読む)

愛国商売 (小学館文庫)

古谷 経衡

小学館

2019年11月6日 発売