「僕のこと、書き残してね。僕のこと一番知ってるの、貴だから」高倉健が生前に遺した言葉を胸に、2人の出会い、共に過ごした17年間の思い出、旅立ちの瞬間までを綴った『高倉健、その愛。』が刊行された。数あるエピソードから健さんの愛すべき一面が垣間見られる「今日は“ペコリン”! 」をご紹介。
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外出時に「今日の晩御飯は何?」
高倉の外出時の確認事項は、「車の鍵」「携帯電話」そして「今日の晩御飯は何?」でした。
「まだ、はっきり決めてませんが、お肉は必ず」
と答えると、
「嬉しいね、肉。はやくメニュー決めてね」
高倉の頰が緩みました。
週7日の肉の内訳は、鶏、鴨、豚、牛、ラム、牛、豚などのように、できるだけ偏らないよう、かつ他の献立との相性も考えました。
晩年は、ステーキを100~150グラムほど用意することが増えました。蒸したりグリルした野菜を、肉の倍ほどのボリュームで彩りよく添え、多めのガーリックチップスとクレソンなどを盛り付けます。
肉の焼き加減は、常に「よく焼き」です。少しでも高倉に違和感があれば、直ちに焼き直し。肉の味わいがなるべく長く残るように、お皿の温かさにも注意を払いました。
高倉はステーキを、山葵と醬油で食べるのが好きでした。
お腹の減り具合を自己申告してくれた
高倉は毎朝時間を決め、体重と体脂肪、血圧を測りました。好きなものを適量を食べながら体重や体調が維持できることがわかると、1日を通しての食事の総量を考えることが身についたようです。
行きつけの床屋さんで「今日は、ヨーグルトとクッキーを食べてきた」、「○○さんと、中華の鶏そばだけ食べてきた」など、外出先で食べたものを、間食も含めて帰宅後必ず伝えてくれました。
「今日はまだ“ペ”」
帰宅した後の最初の言葉は大抵、「ただいま」ではなく、ペコリン度数(腹ペコからとった高倉の造語)でした。「今日は“ペコリン”! 何食えるの?」の日もあれば、「今日はまだ“ペ”くらいかな。先に少しお茶を飲みたいね」などと、お腹の減り具合を自己申告してくれました。