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お気に入りのカトラリーセット

 高倉が、海外のロケ先で買ってくるものは、ほとんど自分用の衣類や靴、鞄でしたが、ある時、「とてもきれいに見えたから……」とカトラリー(ナイフ、フォーク、スプーン)セットを買ってきました。高倉の食への興味が深まっていると感じました。

©iStock.com

 膳の上でカチャカチャという音が出るのを嫌っていたので、箸で食べられるよう切り分けてから皿に盛り付けることがほとんどでしたが、時折、高倉お気に入りのカトラリーをセットすると、ロケの思い出話を楽しく聞くこともできました。

「早いのが嬉しいよ」が口癖

 雑誌やテレビの料理番組を見ながら、

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「ちょっと来て! これ、食べてみたい。作れる?」

 という特急リクエストも少なくありませんでした。

 材料さえ揃っていれば、「少し、アレンジして作りますね」と、油分を減らし、薄味を心掛けながら、できる限りその日の夕食で再現しました。

「早いのが嬉しいよ」が、高倉の口癖の1つ。これは実は下の句で、正確には、「遅い仕事は誰でもできる。早いのが嬉しいよ!」でした。

高倉健、その愛。

小田 貴月

文藝春秋

2019年10月30日 発売