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「みんな待ってますよ」が一番嬉しかった――マンガ『うつ病九段』に学ぶ“うつヌケ”のヒント

 プロ棋士の先崎学九段を“うつ”が襲ったのは、47歳の誕生日の翌日でした。頭がどんよりと重く、将棋を指しても対局にまったく集中できない。そのうち、1日のうち何度も電車に飛び込む自分の姿が脳裏をよぎるようになります。

「学、入院するんだ。このままでは自殺の恐れがある」

 精神科医の兄からのアドバイスによって、先崎さんは信濃町にある慶応大学病院精神神経科への入院を決意します。

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 文春オンラインで連載中のマンガ『うつ病九段』は、うつ病になって休場を余儀なくされた先崎さんが、リハビリを兼ねて綴った闘病エッセイを漫画家の河井克夫さんがコミカライズしたものです。

 連載は現在、1カ月に及ぶ「入院篇」が終わったばかり。そこで、先崎さんが入院中に体験したエピソードをまとめてみました。そこには“うつ”脱出のための貴重なヒントが散りばめられているはずです。

規則正しい日課で生活リズムを取り戻す

 うつ病の場合、生活リズムを整えるのが治療の大原則。毎朝6時起床、ラジオ体操、そして朝食……という規則正しい生活が日課となります。しかし、不眠のため朝が辛い先崎さんにとって、この規則正しい生活が苦行となります。また、本や雑誌を読んでも、活字がまったく頭に入ってきません。

 

「極悪期」は必ず終わる。生理的反応を見逃すな

 この最悪の時期、先崎さんは兄からの「必ず治ります」というLINEメッセージのみを希望に生活していました。生きる屍のような「極悪期」が過ぎると、身体が回復してくる兆しを感じ始めます。

 久しぶりにシャワーを浴び、さっぱりした後に食事をすると、麻痺していた味覚も戻ってきました。そして、あの生理的欲求がムズムズと──。「動画が見たい…」。