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お見舞いには「みんな待ってますよ」の一言を

 ようやく入院生活にもなじんできた先崎さんは、それまで制限していた見舞い客との面会を始めます。懐かしい顔に会って楽しい半面、元気な人や声の大きな人と接すると、疲れてしまうことに気づきます。先崎さんの場合、いちばん嬉しかったのは「みんな待ってますよ」という一言でした。

 

周囲の世界がモノクロから原色へと変わる瞬間

 少しずつ回復を実感するようになった先崎さんは、アマ初段の看護師と対局をします。自分は本当に将棋が指せるのか、試してみたかったからです。ところが、実力的には決して負けるわけがない相手に、大苦戦を強いられます。

 一方、テレビを見ていると、いままで白黒だった周囲の世界に色がつき、フルカラーになるという経験をします。治療の成果が現れてきました。

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うつにとって散歩は何よりの薬

「うつにとって散歩は薬のようなものなんだ」

 精神科医の兄の言葉を信じ、先崎さんは毎日、毎日、散歩を続けます。1日3時間くらいずつ、ひたすら外苑周辺を歩き続けました。気力が目覚めてきた先崎さんは、病院の廊下でシャドウ・ボクシングも始めます。本格的にうつとの闘いに向き合うようになったのです。

 

 その後、一時外出の訓練を経て、先崎さんは無事退院することができました。入院期間は1カ月。先崎さんにとって人生で最も辛く、最も長い1カ月が終わったのです。「極悪期」を脱し、シャバに戻った先崎さんですが、復帰への道はまだまだ険しいものがありました──。

 続きは「うつ病九段」の連載ページ(https://bunshun.jp/category/utsubyou-kudan)から読めます。