今年の流行語大賞には間に合わなかったが、「血液クレンジング」の問題が表面化したことで、「ニセ医学」とか「トンデモ医療」という言葉がネット上に氾濫している。科学的根拠に乏しい“治療法”のことなのだが、こうした行為を患者に行う医師と、それを受けようとする患者が存在するのは、何も今に始まったことではない。問題化しては立ち消え、また時間が経つと湧き出てくることの繰り返しが連綿と続いているのだ。

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 そこで、『“意識高い系”がハマるニセ医学が危ない!』(育鵬社刊)の著者で五本木クリニック院長の桑満おさむ医師に話を聞いた。

トンデモ医療の多くは「毒にも薬にもならない治療法」の焼き直し

 トンデモ医療の対象として話題の「血液クレンジング」とは、体内から取り出した血液にオゾンを加えて活性化させ、それを体内に戻すという“治療法”のこと。オゾンに反応して活性化した血液が体内を循環することで、様々な効果が得られる、という触れ込みだ。これを行うクリニックのホームページによると、疲労回復、肌や細胞の若返り、病気にかかりにくくなる(免疫力向上)、血行改善などの効果が期待できるという。

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 その程度の改善を「期待する」ために、高額な(そのクリニックでは1回13,000円)の医療費を払える裕福な人は受ければいいのだが、その先を読んでいくと穏やかならぬ文言が出てくる。「治療効果の期待できる疾患」として、肝炎、HIV、インフルエンザ、がん、悪性リンパ腫、白血病……。そんな重病まで1回13,000円で治せるなら、こんな結構なことはない。

 しかし、桑満医師は一刀両断に切り捨てる。

桑満おさむ医師

「いまから100年以上も前の1892年に、結核治療法として考え出された“オゾン療法”の焼き直しです。当時は結核に対する効果が認められたものの、限定的なものに過ぎません」

 桑満医師によると、トンデモ医療の多くは、こうして過去にあった「毒にも薬にもならない治療法」が、名前を変えて使われていることが多いという。

「体が温まったような気がするとか、何となくシャキッとするとか、効いたのかどうだかわからないような“効果”に過ぎない。白衣を着た医師の言葉の力は患者を納得させるには強く、「効果が出てますね」と言われると、そんな気分になるものなんです」(桑満医師、以下同)