本来、相続とは故人の私有財産を子供や配偶者が引き継ぐだけの話です。
しかし、日本ではそのために相続税という大きな金額の支払い(納税)が発生し、相続のたびに私有財産がどんどん目減りしていきます。これで本当に私有財産が認められている国といえるのかと疑問に思って当然です。
財務省が国民を“洗脳”していることとは
この点について私たちの多くが疑問を感じないのは、日本の財務省が巧妙に私有財産制を否定し、国民にそれが当たり前のことのように思わせているからです。
赤い資本主義の中国では、私有財産制が制限され、たとえば土地を購入する場合、対価を払って50年間の利用権を手に入れるだけで、土地が自分のものになることはありません。
いっぽう、日本では一応、土地を購入することができ、名義もすべて自分のものにできるのですが、固定資産税や相続税が払えなければその土地もいずれ手放すほかなくなります。
とすれば、中国の利用権と日本の私的所有権の間にそれほど大きな差があるとも思えません。毎年お金を払うことで、また相続のたびにお金を払うことで維持できる権利であるならば、それは私有財産ではなくリース物件というべきでしょう。
私は、安倍首相の登場によって、日本が世界の中で当たり前の国になる道を歩んでいると考えています。それは、自らの力で安全保障を進め、防衛を行い、国際交渉を行い、貿易などの経済活動を行う国のことです。
同時にそれは、世界に冠たる資本主義の国ということでもあります。日本がそういう姿を目指すなら、押しも押されもせぬ私有財産制を確立しなければなりません。
日本はいま、そういう時期にきています。ですから、相続税に対する大きな見直しが行われる日もそう遠くないのではないかと思います。
国際エコノミスト
1935年東京生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、山一證券入社。山一證券経済研究所、山一投資顧問を経て、日本債券信用銀行顧問、日債銀 投資顧問専務、白鷗大学経営学部教授などを歴任。主な著書に『シェールガス革命で復活するアメリカと日本』(岩波出版サービスセンター)、『経済大動乱下! 定年後の生活を守る方法』(中経出版)、『日本株「超」強気論』(毎日新聞社)、『恐慌化する世界で日本が一人勝ちする』『日経平均3万円 だから日本株は高騰する!』『米中の新冷戦時代 漁夫の利を得る日本株』(以上、フォレスト出版)など多数。公式ウェブサイト