その後、2006年に首相に就任した安倍氏も小泉氏と同じ手法を取った。しかし当時52歳の安倍氏は小泉氏のような経験は乏しかった。コメントは面白くなく、カメラ目線で語ると「気持ち悪い」、カメラから目をそらすと「目が泳いでいる」と批判を受けた。
極め付きは同年末のやりとりだ。記者から「首相にとって今年の1文字は」と聞かれて「それは……『責任』ですね」と「字余り」で回答。「アドリブが利かず、質問の意図も理解できない。総理の資質を欠く」というイメージが定着してしまった。1年足らずで首相官邸を去る遠因のひとつとなったと言ってもいい。
2012年、首相に復帰した安倍氏は、過去の反省から、定例の記者インタビューに応じないようになった。それが7年に及ぶ長期政権につながったとみることもできるのだ。
説明すべきことが増え、結果として墓穴を掘る
自ら禁を破って記者インタビューを「解禁」した安倍氏。マスコミを通じて直接国民に語りかけることは悪いことではない。しかし、語れば語るほど後から説明がつかなくなる危険があるのは言うまでもない。
15日、20分以上に及ぶインタビューでも野党側から寄せられている「『桜を見る会』の参加条件に『功績・功労』があるかどうか」「安倍事務所が紹介して内閣府が却下した例はあるか」など、安倍氏が答えなかった質問には答えていない。安倍氏の思惑通り、この問題を打ち切ることはできない。
説明責任を果たす姿勢を見せれば見せるほど、説明すべきことが増えてしまい、結果として墓穴を掘ることもある。そのことは12年前、安倍氏自身が証明しているのだ。
内閣支持率は9カ月ぶりに5割を下回った
「案の定」といおうか安倍氏は週をまたいで18日にも記者団の前に立ち、改めて公職選挙法や政治資金規正法に違反するようなことはないと釈明。その一方で「前夜祭」の経費の総額を示す明細書や、自身の後援会や事務所が発行した領収書は残っていないと説明した。
野党側はこれに一斉に反発しており、安倍氏はさらに説明に追われることになるだろう。
読売新聞が15日から17日に行った世論調査で、内閣支持率は前回調査と比べて6ポイント下落、49%で9カ月ぶりに5割を下回った。桂太郎を抜いて首相在任日数が憲政史上最長になろうとしている安倍氏は世論の動向をにらみながら「説明責任」に悩まされ続けることになる。