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GSOMIA「名分なしに延長すれば支持層が納得しない」

 別の中道系の韓国紙記者も、破棄することに批判的だ。

「8月、韓国が日本に破棄の意向を通告した時は正直、仰天しましたが、ちょうど曺国事態が始まってその火消しという意味合いもあった。建前上は、日本も安保上の問題から韓国への輸出規制とホワイト国排除を行ったと説明しましたから、安保上の信頼が壊れた日本とはGSOMIAは続けられないというのが青瓦台の立場です。政府は曺国事態での迷走もあり、来年4月の総選挙を見据えると、日本からの譲歩なしに延長すれば支持層が納得しない。

 しかし、有事の際、GSOMIAがなければ駐韓米軍や他地域に駐屯している米軍の朝鮮半島支援展開においていちいち米国を介さなければならず、不必要な時間がかかり、円滑なコミュニケーションがとれなくなります。また、エスパー米国防長官が話していた通り、GSOMIAは韓米日3カ国協力の象徴的な協定で、これが終了されれば韓米日の協力が弱まってしまう。

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 GSOMIA破棄で、日本のみならず今度は米国との関係にどんな綻びができるか、それを青瓦台は想像しているのか疑問です。ここは名分などを考えずに国益を優先させるべきなのですが」

文在寅大統領 ©getty

徴用工裁判判決がきっかけに

 そもそもGSOMIAを巡る葛藤の発端は、昨年10月30日に出た徴用工裁判の判決だ。韓国では日本の輸出規制はこの判決処理に動かなかった韓国への報復とする見方が根強い。判決後、1965年の日韓請求権協定で解決済みとする日本に対し、韓国は「判決を尊重する」としたまま、沈黙を保った。

 その間、韓国では、「青瓦台は1965年の韓日基本条約そのものの見直しを宣言するのではないか」といった声も聞かれたが、そんな動きも見られず、5月には日本が日韓請求権協定に基づいて第三者を交えた仲裁委員会の設置を要請。しかし、韓国はこれに応じず、ようやく動いたのは6月だった。大阪で開かれたG20への訪日を前に文在寅大統領が「1+1(日韓企業)」案を提案したが、時すでに遅し。日本は5月に李洛淵総理が「政府の対応策では限界がある」と発言した時点で、輸出規制などの韓国への報復措置を考えていたという話が韓国紙記者の間でも定説になっている。

 しかし、実は昨年内に解決する見込みがあったというのは保守系韓国紙記者だ。

「昨年10月30日に判決が出た後、李洛淵総理の下、対策チームが立ち上がりました。そこであらゆる案が出され、シミュレーションも行われた。その中から昨年12月末までには結論を出して、日本側に説明する方向で、国民の理解を請うことで話が進んでいたそうです。

 しかし、この時も青瓦台の大統領側近らの強硬な反対で頓挫したと聞いています」