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「進路相談は5分で終わり」東大合格者を量産する“男子御三家”の意外な素顔とは

OBたちの母校に寄せる思いの強さに驚かされた

2019/11/20
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「高3のときに面談はありますけど、本当に適当ですよ(笑)」

 実際、大手塾の模擬試験における各校の合格基準偏差値をみてみると、多少の浮沈はありつつも、麻布、開成、武蔵の三校は難関校としての地位が数十年に渡り揺らいでいない。

 ちなみに、「男子御三家」「女子御三家」以外にも「御三家」で括られる学校群が存在する。「横浜(神奈川)男子御三家」は「浅野」「栄光学園」「聖光学院」を、「横浜(神奈川)女子御三家」は「フェリス女学院」「横浜共立学園」「横浜雙葉」の三校を指している。ほかに、「男子新御三家(海城・駒場東邦・巣鴨)」、「女子新御三家(鴎友学園女子・吉祥女子・豊島岡女子学園)」といった呼称もある。

 それでは、麻布、開成、武蔵とはどのような学校なのだろう。略述してみよう。

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 麻布、開成、武蔵とも国立・早慶をはじめとした難関大学へ数多くの合格者を輩出していて、いわゆる「進学校」としての実力は確かなものだ。

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 ところが、である。男子御三家各校の卒業生に学校サイドが進学指導にどの程度力を入れているかを尋ねると、意外な返事ばかり。「特に進学指導らしい指導は受けていない」という。

 麻布の卒業生の一人は言う。

「高3のときに面談はありますけど、本当に適当ですよ(笑)。俺は担任が面談担当だったんですけど、『進路相談、次はお前だ』って言われて入っていくんですが、いきなり『どこ目指そうと思っている?』って聞かれたので、『まあ東大かな』って返答したんです。そしたら、『何の科目で受けるんだ?』と尋ねてきたので、『いまのところ理系科目は地学で、社会は考えている最中です』って答えたら、『そっか、お前地学好きだもんな。がんばれよー。じゃあ、次のヤツ呼んできて』って、本当にそれだけ」

「東京大学一辺倒という雰囲気はありません」

 開成についてはどうだろうか。進路指導があまりされないということは、裏返せば東京大学を目指すことが当たり前の雰囲気になっているのかもしれない。

 しかし、ある卒業生はそんなことはないと苦笑する。

「東京大学一辺倒という雰囲気はありません。この大学を狙えなんて一切言われない。最後に二者面談があるんですが、先生とは5分も話していないですね。丁度、わたしが高3のときに父が亡くなったんです。それもあって、先生からは『生活は大丈夫か?』なんて話があったのを覚えています。で、最後の最後に一言だけ『ところで大学はどこに行きたいんだ?』って。で、『(東京大学の)文I(文科1類)です』と返すと、『あ、そう。じゃあ(校内の実力テストで)50~60番くらいには入っていた方がいいな』って、たったそれだけですね」

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 別の開成の卒業生は以前3年間住んだ広島に愛着があったため、広島大学に行きたい旨を面談で申し出たという。

「そう切り出すと、『あ、そうなんだ』って。本当にそれだけでした。ただ、広島大学という選択肢が珍しかったのか、先生がどこかでポロッと口にしたらしく、学内で『○○くんは広島大学志望らしい』という噂が一気に駆け巡りました」