麻布、開成、武蔵は、東大をはじめとする最難関大学に毎年数多くの合格者を送り込み、高度成長時代以降、受験界では「男子御三家」としてその名を轟かせてきた。三校とも非常に個性的な教育をおこなうことでも有名だ。
著者は中学受験塾講師として25年以上にわたって指導を重ね、数多くの教え子を男子御三家に送り込んできた。今回、『男子御三家』(文春新書)の執筆に当たって、著者の教え子をはじめ数十人の男子御三家卒業生が取材に協力してくれた。各校が求める生徒像、6年間の学園生活の詳細、さらには男子校ならではのぶっちゃけトークも炸裂。
今回は、その「序章」から抜粋する。
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男子御三家とは
「男子御三家」と呼称される私立中学校・高等学校をご存知だろうか。
これは東京にある私立男子校「麻布」「開成」「武蔵」の三校を指し示している。
それぞれが長い歴史を背負った伝統校であるとともに、難関大学合格実績では毎年屈指の結果を残している進学校だ(2019年度の東京大学合格者数は、麻布100名、開成186名、武蔵22名)。三校ともその知名度は全国区である。
そんな学校だからこそ、入口に高いハードルが設けられている。中学受験の世界では難関校として知られ、難問揃いの入試問題に挑み、高倍率の入試を突破しなければならない。中学受験生にとってはまさに憧れの存在である。
わたしは2015年10月に『女子御三家』(文春新書)を上梓した。「女子御三家」とは、東京にある「桜蔭」「女子学院」「雙葉」の三校を指す。いずれも才女が通う女子校である。この本では数多の卒業生(OG)たちに取材を試み、また、学校関係者の声をふんだんに反映することで、それまであまり知られていなかった女子御三家の実像を浮き彫りにした。卒業生である彼女たちのほとんどは身振り手振りを交えて母校を懐かしく振り返りながら、嬉々として学校の内情を話してくれた。
では、今回の『男子御三家』はどうか。
卒業生(OB)たちが嬉々として母校を語るのは同様であるが、びっくりさせられたのは男子御三家出身者の母校に寄せる思いの強さである。むしろ、「強過ぎる」と表現してもよいかもしれない。女子御三家出身者たちはどこか冷静で客観視しているような物言いに感じられたのに対し、男子御三家出身者たちは母校を思い入れたっぷりに、ときには感情をあらわにしながら語るのである。
母校とはその漢字の意味する通り「母なる存在」である。女性よりも男性のほうがやはりマザコン要素、母校愛というのは強いのかもしれない。そんなことを感じさせられた一端をまずは紹介しよう。