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 石井支店はすぐさま本店に連絡を取り、指示を仰いだという。金額もさることながら、愛媛銀行は恒生銀行と取引がなかったため、コルレス契約をしているみずほ銀行に送金を委託する必要があったのだ。

 ただ、男性が大阪支店に口座を持っていることなどから、本店から「問題はない」との判断が降りた。石井支店は、その男性の希望通り、みずほ銀行を経由する形で、970万円を香港の恒生銀行に送金する。

男はみずほ銀行を経由する形で香港へ送金した ©AFLO

「K Barun Company」の正体は……

 だが、愛媛銀行の驚きはこれだけでは終わらなかった。男性は6月下旬にかけて、たびたび石井支店に姿を見せ、そのたびに1億円前後の送金を依頼してきたのだ。送金先は同じ香港・恒生銀行の口座。結局、都合5回、送金総額は5億5185万8000円に及んだという。

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 なぜ男性は四国の地方銀行から香港に5億円を超える送金を行ったのか。実は、送金先である「K Barun Company」は北朝鮮との関係がある会社だったのだ。そして、ドル取引で行われたこの案件を、米財務当局も掴んでいるという――。

 果たして、FATFは愛媛銀行の案件にメスを入れるのか。政府が危機感を抱く審査結果の公表は来年6月頃の見込みだ。

出典:「文藝春秋」12月号

「文藝春秋」12月号および「文藝春秋 電子版」では、児玉氏が「北朝鮮制裁は抜け穴だらけだ」と題し、愛媛銀行を舞台にした不正送金事件の真相のほか、和歌山の業者が関与する日中合弁会社を通じた北朝鮮取引、FATFナンバー2の韓国人検事の存在などについてレポートしている。

文藝春秋

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北朝鮮制裁は抜け穴だらけだ 国際機関が警告