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 ただ、彼女たちの能力を目の当たりにした私からすると、その額は決して高くはないように感じる。私は中学受験で立方体の問題が苦手だったが、あのプロ家庭教師たちに教わっていたら、ある程度はマスターしていたように思う。このような敏腕プロ家庭教師が指導した受験生たちは非常に“戦闘力”が高くなる。この多額課金キャラたちに、自学自習で学力を伸ばす従来型の秀才が負けていくことも増えているのだ。

「少数からお金を搾り取るビジネスモデルに変化している」

 現在、小学校6年生で受験生の息子を抱える母親はいう。

「うちは幼い弟が騒ぐこともあって、自宅では勉強できない環境です。落ち着いて集中する環境を与えようと個人指導塾に通わせたら、みるみる成績があがっていくんですよ。当たり前ですよね。今まで大手塾以外で勉強しなかったのが、週に何時間か集中して勉強するようになったんですから。ましてやプロがついて、大手塾の復習をさせてくれるんですものね」

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 課金したら、成績が上がった。こうなると、課金は止められなくなる。

 中小の塾の経営者はいう。

「少子化の中、教育産業は広く浅くではなく、少数のコアな層からお金を搾り取るビジネスモデルに変化しているんです」

難関校が“放任主義”を捨てはじめた

 さて、この中学受験の課金ゲーム化に最も頭を抱えているのが難関中学である。難関校は元来、地頭がよくてかつ自学自習ができる生徒たちが入ってくるところだった。だから、学校は環境だけを提供して、大学受験対策はしなかった。放任主義が難関校の基本姿勢だった。

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 ところが、親に課金され、強制的に勉強をさせられてきた生徒たちはほっておくと勉強をせず、どんどん学力が落ちていく。そのため、いくつかの難関校では放任主義を止め、小テストや宿題をおこない、管理教育をし始めた。ここで新たなる問題が出てくる。難関校には、管理して、生徒を勉強させるノウハウがないのだ。

 難関大学専門塾の講師がこう話す。「ある難関校の生徒が学校で出された“東大対策”の課題を僕のところに持ってきたんです。その課題の質があまりに低い。全然東大対策が分かっていない」。ようは大学受験対策のノウハウが蓄積されてないから、適切な課題を出せないケースもあるわけだ。