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 このように、難関校としては、課金されて入ってくる生徒たちの対応に非常に手を焼いている。開成もそれは同様で、本音では、従来のような自学自習できる生徒がほしいはずである。その秘策として今回の奨学金制度があるように思える。

「年間所得218万円以下、または給与収入のみの場合収入額400万円以下の世帯の子弟」が条件だ。この経済状況の家庭では、まず個人指導塾や家庭教師は利用できない。そうなると、大手塾に通うとしても、後は自ら机に向かって自力で復習をし、中学受験をクリアしてくる受験生たちとなる。

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課金キャラに負けない「最強秀才キャラ」を囲い込む

 この奨学金制度に対して、「中学受験は特殊なので大手塾に通いノウハウを学ばないとクリアできない。経済的な余裕がない家庭は大手塾の費用すら出せないから、そもそも開成に合格できないのでは」という指摘もあるが、そこにはちゃんと救済策がある。

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 中学受験の大手塾では成績優秀者を授業料全額免除、もしくは半額免除にして囲い込む。実際、難関校出身者を取材していると、実家は裕福ではないが、入塾試験で高得点を出し、特待生として格安で塾に通ったという話をしばしば聞く。ごくわずかだが、世間にはいるのだ。自学自習中心で勝負をし、課金キャラに負けない秀才たちが。

 その希少な最強秀才キャラはどこの学校でも喉から手がでるほどほしい。その層を囲い込むために、開成中学は奨学金制度をはじめるようにみえる。

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 ちなみに、開成は高校入試では2015年から、この“授業料免除”の『道灌山奨学金』をすでに導入している。高校入試組は学費が安い学校を選ぶ傾向があるから、学力が高い層ほど国公立に流れる。昨今は都立や県立高校が力をつけているから、開成は第二志望校という位置づけだ。だから奨学金制度で、学力上位層に第一志望校として選んでもらおうという作戦なのだと推測できよう。

 この高校での試みが成功したため、中学にも拡大するということなのだろうが、中学受験では開成は第一志望校なので、事情は違ってくるはずだ。中学でも奨学金制度はうまく機能するのだろうか。日本のエリート教育の行方を見守るためにも、開成の試みに注目し続けたい。