わたしは前回の記事(なぜ名門男子校・麻布は「反体制派」を量産するのか)で「男子御三家」の一角である「麻布」を紹介した。その際に男子御三家各校の卒業生たちのキャラクターについての「たとえ話」を挙げた。再掲しよう。

 もし複雑なプラモデルを組み立てるのであれば?

・麻布生……組立説明書は無視、感覚だけで独創的かつ味のある逸品を製作する。
・開成生……組立説明書を一言一句しっかり読み込み、精巧で完璧な作品を製作する。
・武蔵生……組立の途中で各パーツにのめりこんでしまい、なかなか作品が完成しない。

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©平井さくら

 今回は「開成」を取り上げたい。

東大ナンバーワンの座に38年君臨しつづける開成

 開成といえば何といっても東京大学合格者数ナンバーワンを誇ることで全国的に名を馳せ、進学校の頂点に燦然と輝く学校だ。この栄誉は近年だけのことではなく、1982年以来、実に38年に渡ってナンバーワンの座に君臨するというのだから凄い。2019年の東大合格者数は186名(過年度生を含む)。なお、第2位は筑波大学駒場が120名(過年度生を含む)である。

 前回紹介した麻布が都心の一等地、高級住宅地の中に位置するのとは対照的に、開成は下町情緒漂う場所に存在している。学校所在地は荒川区西日暮里4丁目。

開成卒業生同士のあいさつは「何組?」

 わたしの経営する中学受験専門塾で開成出身の講師がいる。

 あるとき、生徒の父親が開成出身だと判明した。そのとき、ロビーで二人のはしゃいだような声が講師室まで響いてきた。

「え!? お父様は何組ですか? わたしは紫組だったのですが」

「わたしは緑組だったのですよ!」

「そうなんですねえ!」

 そんなふうに盛り上がっている。

 ひとりの卒業生が「色」の意味を教えてくれた。

「運動会本番は8色分の桟敷があって、そこに並んで応援するのです。組ごとに色が決められています。1組が紫、2組が白、3組が青、4組が緑、5組が橙、6組が黄、7組が赤、8組が黒です」

©iStock.com

 そして、この組は学年別に編成されるわけではなく、「縦割り編成」なのが特徴的だという。

 ある卒業生は開成出身者独特の「あいさつ」についてにこやかにこう語ってくれた。

「卒業後、開成出身の人に出会うと、第一声は『何組だった?』って、その色を聞くんです(笑)。そのあとに、運動会でどういう役職をしていたかを聞き出します。イギリス人があいさつ代わりに天気の話をするのと感覚的には多分同じです(笑)」

 そう、開成の学校生活の中で全校を挙げて最も盛り上がる行事は「運動会」なのだ。