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 開成や麻布などのトップクラスの難関校に入る子供たちは今も昔も地頭はいい。ただ、地頭がよいだけでは受験には勝てない。2000年代までは、地頭がいいのに加えて、勉強が好きだったり、自制心が強かったりして、自ら机に向かって学習する性格でないと、難関校には受からなかった。大切なのは塾での予習や復習であり、自学自習できる受験生たちが“二月の勝者”になっていった。

「子供が勉強をしない」をお金で解決できるようになった

 その頃に受験を経験した難関校の卒業生にインタビューすると、「大手塾に通って、あとは家で自分で復習してただけです。そうしたら、成績が伸びたんで、周囲に勧められ開成を受けて入ったんです」といった話をしばしば聞かされる。本人も親も無理をしていない。自分のペースで勉強していて、学力にあったところに入学し、それが難関校だったというだけだ。

 ところがだ。現在は勉強が好きでなかったり、集中力がない受験生を強制的に勉強させるノウハウやツールがそろっている。今も昔も世間の親の最大の悩みは「子供が勉強をしない」であるが、現在はその悩みをお金で解決できるようになっている。

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算数一教科のために月40万円を支払う家庭も

 個人指導塾の講師はこう話す。

「偏差値上位中学の合格者の40%が大手塾、サピックス出身者です。上位校に特化した塾ともいえますが教材が不親切なんですよ。授業で分からなかったところを、後から子供が見直そうとしても、解説が分かりにくいので自力で復習できない。それを補完するために個人指導や家庭教師を利用するケースが増えていったんです」

 取材で接したサピックス現役生(小6)の母親が「サピックスの塾代と個人指導塾の費用、そして、家庭教師代で月に20万円払っている」というので、私が「そんなにたくさんかかるんですか?」と驚くと、「サピックスで一番上のクラスにいて、開成や桜蔭なんかを狙う子たちはもっとかかっていますよ」と話してくれた。

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 こういった個人指導塾講師や家庭教師は、料金は高いが、その額に見合う能力がある。それらを利用している受験生ほど塾の授業についていけるので、より成績もあがっていく、という仕組みである。プロ家庭教師派遣企業の経営者を取材した時のことだ。「保護者向けに各科目の対策を講習するので見学しないか」と誘われた。「勉強の内容を聞いても退屈だろうなあ」と思いつつも見学したところ、夢中になって聞き入ってしまった。教え方がうまく、わかりやすい。勉強嫌いの中年の私が面白く聞けるのだから、受験生も集中できるだろう。

 この企業の家庭教師は、感じがいい女性たちばかりで、志望校の選択などの相談から、メンタルケアまで対応する。この企業のトップクラスのプロ家庭教師たちを雇うと、1時間1万2000円である。1回2時間、週に1回呼ぶとしたら、月に10万円ほどかかる。中には算数一教科で、月に40万円近い家庭教師代を支払う家庭もあるという。